日本ユマニチュード学会への期待


イヴ・ジネスト先生

2012年に初めて日本を訪れてから9年経ちました。この間日本におけるユマニチュードの取り組みは飛躍的な変化を遂げています。

ユマニチュードを学ぶシステムは東京医療センターで開催する集合型の2日間の研修から始まりました。現在、フランスと同様にインストラクターが施設を訪問し、ベッドサイドで一緒に課題解決を行う4日間の訪問型の研修が実現し、さらにオンラインによるさまざまな研修も始まるなど、日本のみなさんにユマニチュードを学ぶ機会を数多く提供することができるようになりました。

ユマニチュードはケアを通じて自律、自由、平等、博愛の実現を目指します。この実現には、ケアを行う個人の力だけでなく、ケアが行われる環境、施設運営方針など多くの要素の質の担保が求められます。フランスでは、ユマニチュードを学び、実践している施設が「自分たちのケアの質を客観的に評価したい」と考え、自然発生的に「ユマニチュード施設認証制度」が誕生しました。質の高いケアの国際水準となったこの認証制度は、単なるケア技術の質やケアを受ける人とその家族の満足だけでなく、ケアが行われる環境、ケアをする人の満足など多次元の評価に基づいています。

認証取得までの道のりは、短いものではありません。また、国ごとに異なる状況に適応する必要があります。日本における「ユマニチュード施設認証制度」を考える時、国際水準のケアに到達する道筋を、3つのステップに分けることにしました。3つの到達点を明確にし、到達点ごとに中立的評価機関による評価を受け、「銅メダル」「銀メダル」「金メダル」を得るシステム作りを2021年から始めています。これから2年ほどのうちに、日本に「ユマニチュード施設認証・銅メダル」を獲得する施設や病院が誕生することを私は心から願っています。日本ユマニチュード学会には、ケアの国際水準に関する中立的評価機関としての役割を担ってほしいと考えます。

それと同時に、日本ユマニチュード学会に対して私が期待していることは、ケアの科学的解明です。日本科学技術振興機構のCRESTでは、京都大学の中澤篤志准教授のリーダーシップのもと、九州大学・静岡大学・東京医療センターをはじめとする日本国内のトップ研究者が集い、ユマニチュードの技術分析と臨床研究を行っています。特に、情報学・人工知能・ロボット工学の観点からのケアの分析は、世界初の成果をあげています。九州大学の倉爪亮教授のチームが開発した、拡張現実を用いたインタラクションによるケアのシミュレーションシステムは本当に素晴らしいものです。40年を超える私の経験を踏まえ、このシステムのケア専門職教育、家族介護者教育への導入は、素晴らしい効果を上げ、ケアの現場に革命を起こすことができると確信しています。

日本ユマニチュード学会が、大学や研究機関、さまざまな事業体、自治体と協力し、優しさに満ちた、ひとがつながる社会を作り上げていくことを私は期待しています。

2021年4月1日

ユマニチュード考案者
Yves Gineste