ユマニチュードに関する学術論文や研究成果

日本で初めてユマニチュードの講習会を行ったのは2012年。

現在では、医療や介護の現場だけに止まらず、広くご家庭でのケアに取り入れられることも増えてきました。しかし、実際にユマニチュードを取り入れることで日々のケアや被介護者の行動心理症状、介護者の心理的負担はどのように変わるのでしょうか?

ユマニチュードの効果とより良い活用方法を科学的に解明・実証するために、世界中の大学等研究機関の医学・看護学・情報学・心理学等の専門家たちによって、さまざまな共同研究が進んでいます。本ページでは、それらの主な研究結果をご紹介します。

学会年次総会について

学会年次総会に関する情報は、下記のページでご紹介しています。

論文・研究成果のご紹介

ユマニチュード®︎ケア技法を用いた看護介入の効果に関する文献レビュー

2021年10月13日に医学中央雑誌Web版データベースにより、「ユマニチュード」と「効果」とのキーワードを掛け合わせて、全年度の文献を「原著論文」と「看護文献」での絞り込み検索を実施。得られた文献ついては筆頭著者の所属と文献の刊行年に関する「文献の属性」及び、精読した文献から読み取れた「ユマニチュードケア技法を用いた看護介入の効果」の2側面から整理・分析を行った。

本論文は著作権者である看護ケアサイエンス学会の許可のもとに掲載しています。ご利用の際は著作権法に従ってください。

 

家族介護者へのユマニチュード教育効果

家族介護者がユマニチュードの講習とワークショップに参加することで、介護者の負担が軽減し、介護を受けている認知症高齢者の行動心理症状が改善することを発表しました。

 

人とテクノロジーが共にユマニチュードを学ぶことで良いケアを実践できることの提案

人が学べるケアの技術はテクノロジーも学ぶことができ、人とテクノロジーが共同で良いケアを実践することができることを提案する、ユマニチュードの論文が発表されました。

 

医学部学生へのユマニチュード教育の効果

医学部生を対象とした6年間の縦断観測研究を行い、知覚、感情、発話に焦点を当てたユマニチュードのケアメソッドによって医学生の共感性が高められ、維持されるという仮説検証を行いました。

 

歯科医師・歯科衛生士へのユマニチュード教育の効果

歯科医師・歯科衛生士を対象としたユマニチュードの教育が、患者さんへの共感度を向上させ、さらに患者さんの口腔内の健康状態の改善につながったことを報告する論文が発表されました。

 

ユマニチュードの「優しさを届けるケア技術」の評価分析方法の開発

優しさを届けるケア技術の「見る」に注目し、顔の認識とディープニューラルネットワークによる機械学習手法を使い、「見る」技術を人工知能で評価するシステムを開発しました。

 

一人称カメラを用いたケア技術分析方法の開発

一人称カメラ(ケアをする人が装着したカメラ)で撮影した映像を人工知能を用いて分析することによりケア技術の熟達度を評価するシステムを開発しました。

 

ユマニチュードを職場で学習するための指導モデルに関する研究

ユマニチュードを職場で教育するに際して、実際のケアの様子を撮影し、映像を元に指導を行う教育モデルに関する研究を発表しました。

 

家族介護者を対象としたユマニチュード講習の長期的効果について

家族介護者を対象としたユマニチュード研修の効果が、研修終了後も持続していたことを発表しました。

Honda M, Ito M, Gineste Y. [Concise multimodal communication training for family caregivers reduced theirburden and BPSD of care receivers] 2018 Gerontological Society of America

 

急性期病院ICUにおけるユマニチュード導入効果

急性期病院の集中治療室に勤務する看護師にユマニチュード教育を行いました。教育介入の前1年間と、介入後1年間を比較すると、せん妄が約1/5に、身体拘束が約半分に減少しました。

Sugimoto C, Fukuda K, Honda M [Effect of multimodal comprehensive care methodology training on both delirium and physical restraints in intensive care unit] 2018 American Delirium Society Annual Meeting, San Francisco

 

Marvin Minskyの感情思考モデルに基づいたユマニチュードのケア分析手法開発

人工知能の父と呼ばれる、マービン・ミンスキー先生の感情思考モデルを用いて、ユマニチュードのケアを情報学の観点から分析する手法について発表しました。

Sasaki Y, Ishikawa S, Gineste Y, Honda M et al. [Development of the highly reproducible standardized evaluation system for dementia care by thinking model of artificial intelligence] 14th International congress of the European Geriatric Medicine Society,Berlin, Germany. October 10-12, 2018

 

ケア専門職のための映像を用いた教育・分析システムの検証

ビデオ映像にて従来のケアとユマニチュードのケアそれぞれにおける3つのケアモダリティ(見る・話す・触れる)とその包括性を情報学的に分析し、教育介入によって包括性が有意に改善することを発表しました。

 

ユマニチュード教育介入によりケア・コミュニケーション要素が定量的に改善

ユマニチュードで用いるマルチモーダルコミュニケーションの3要素、見る・話す・触れるを定量的に分析する手法を開発し、ユマニチュード教育介入の効果について検討しました。

 

家族介護者を対象としたユマニチュード講習の効果

自宅で家族を介護している人を対象としたユマニチュード教育介入と毎週郵送されたユマニチュードのワンポイントを伝える絵葉書で、介護をしている人の負担感・介護を受けている家族の認知症行動心理症状のいずれもが軽減しました。

Honda M, Ito M, Gineste Y [2 hour interactive workshop for family caregivers followed by weekly instruction with postcard for 12 weeks reduced burden of caregivers and improved behavioral psychological symptom of dementia of care receivers] 2017 The13th International congress of the European Geriatric Medicine Society

 

映像を用いた遠隔コーチングシステム開発

撮影したケアの映像を、インターネットを通して遠隔地で確認しながらその映像にコメントや図を挿入するコーチングシステムを開発しました。

Omata A, Sakane Y, Ishikawa S, Honda M, Ito M, Takebayashi Y. [Constructing a video-based remote coaching platform to develop professional skills in dementia care] 2016 The 10 thWorld Conference of Gerontechnology

 

療養型病院職員へのユマニチュード教育効果

療養型病院職員を対象としたユマニチュード教育介入を行ったところ、対照群と比べて介入群は担当患者の認知症行動心理症状が有意に低下したことを報告しました。

Ito M, Honda M [Improvement of Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD) and Higher Caregiver’s Recognition of the Response Change inCognitive Frailties by Comprehensive Standardized Care Methodology] 2016 The 5th International conference of Fraily and Sarcopenia Research

 

急性期病院におけるユマニチュードによる認知症行動心理症状の軽減

認知症患者へのケアの様子を分析した結果、コミュニケーションとして「見る」「話す」「触れる」時間が多いケアを行なった方が認知症行動心理症状(BPSD)が軽減しました。

 

みんなの認知症情報学会代表理事・竹林洋一先生によるユマニチュードの有効性と可能性についての論考

ユマニチュードは「人間尊重」を徹底して、マルチモーダルな介入を行うことで心と脳に刺激を与え、認知症の人の心身の回復が促進することが実証されています。MinskyとDamasioの感情・思考・身体に関わる研究の観点から、ユマニチュードの有効性と可能性について論じました。

 

ユマニチュードの効果: 研究活動・学術論文

Yves Gineste, Rosette Marescottiによるユマニチュード総説

ユマニチュードの第1の誕生・第2の誕生・第3の誕生についての総説

 

現在進行中の研究プロジェクト

国立研究開発法人科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST)

人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開:優しい介護インタラクションの計算的・脳科学的解明(研究代表者・京都大学中澤篤志 分担研究者・本田美和子)

 

日本学術振興会科学研究 費助成事業基盤研究B

ウエラブルセンサーによる介護ケアスキルの定量化(研究代表者・京都大学中澤篤志 分担研究者・本田美和子)

関連リンク

ユマニチュードに関する研究結果は、以下のデータベースで検索することができます。 (Humanitude, ユマニチュード, Yves Gineste, 本田美和子などのキーワードで検索してみてください)

PubMed

アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)の3000万件を超えるデータベースより文献を検索できます。

 

CiNii

CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ])は、国内における論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報で検索できます。

CiNii Articles

学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記事索引データベースなどの学術論文情報を検索できます。

CiNii Books

全国の大学図書館等が所蔵する本(図書・雑誌)の情報を検索できます。

CiNii Dissertations

国内の大学および独立行政法人大学評価・学位授与機構が授与した博士論文の情報を検索できます。