「コロナ患者へのユマニチュード」開催レポート(前編)

会員コミュニティ「雨宿りの木」にて、6月に開催された現場での課題共有会「コロナ患者へのユマニチュード」の模様を前後編に分けてご紹介します。東京医科歯科大学医学部附属病院(東京都文京区)で、新型コロナウイルスによる入院患者の病棟を1年間担当した、看護師の上原佳代子さん(認定インストラクター)をゲストに招き、感染症のケアの現場でどうユマニチュードを実践したのか、その体験を語っていただきました。聞き手は当学会の本田美和子代表理事です。

上原佳代子さん

東京医科歯科大学医学部附属病院 看護師長

東京医科歯科大学医学部附属病院看護師長。2016年にユマニチュード認定インストラクターとなる。同じくインストラクターで看護師長の内山亜紀子さんと共に同院でのユマニチュード導入に取り組み、第二回学会総会でその経過を発表していらっしゃいます。

本田美和子・代表理事(以下、本田) 上原さんは大学病院という大きな組織でユマニチュードを実践するにはどうしたら良いか、ということにずっと取り組んでくださっています。この1年は新型コロナウイルスの患者さんの病棟の師長でもいらっしゃったということで、貴重なお話が伺えることを楽しみにしておりました。

上原佳代子さん(以下、上原さん)  よろしくお願いいたします。昨年4月に当院でコロナ病棟を作ることになり、中等症の「陽性病棟」とコロナの「疑いのある患者さんの病棟」を分けて作りましたが、そこの看護師長として1年間勤務しました。

今年の4月にまた部署は変わってしまったのですが、コロナ患者さんへの対応を通して、ユマニチュードを実践することについても多くのことを考えさせられた1年でしたので、その経験を皆さんと共有できれば嬉しいです。

本田 よろしくお願いします。まず、その病棟が始まったときのことからお話を伺えますか?

ある日突然コロナ病棟に

上原さん  はい。実は私は昨年4月に内科病棟から外科病棟に勤務が変わることになっていたのですが、その外科病棟が突然コロナ病棟に変わることになりました。外科病棟でもともと働いていたスタッフが、そのままコロナ病棟の患者さんを看ることになり、2〜3日の間にスタッフに了承をもらいましたが、「みんながやるなら私も一緒にやる」という感じで残ったスタッフがほとんどでした。

やはり未知のコロナウイルスでしたので、私たちの不安も恐怖もすごく強く、4月の最初に1例目を受け入れましたが、受け持ちとなったスタッフは一晩眠れず、泣きながら病院に来て「怖い怖い」と言いながら一緒に患者さんを迎えたのが始まりでした。

医療者は誰しも「自分も感染するのでは」ということが一番にありましたので、医師も看護師もどう患者さんに関わったら良いのか、今まで通りにはいかないというところで、最初はもう本当に必要最低限、なるべく直接関わらなくても済む方法をいろいろ考えました。

例えばナースコールを使って患者さんに「熱どうですか」「頭痛くないですか」と聞いたりしていたのですが、それではなかなか上手く聞き取りもできず、それならと部屋に入って、本当に短時間で出てくるようにしたり、そんな手探りの感じでスタートしました。

患者さんも、死への恐怖や隔離された環境に突然来てしまった不安をお持ちで、「自分はどうなってしまうんだろう」「死ぬんじゃないか」「不安で眠れない」と誰もがおっしゃっていました。「仕事を急にやめてきたので仕事のことが気になって仕方ない」という方もいらっしゃいましたし、「家族に感染させていないだろうか」と心配される方もいて、本当にその場にいる皆が恐怖と不安でいっぱいという状況で始まったのを覚えています。

防護具を正しくつければ感染しない

本田 初日は泣いてしまうほどに追い詰められていたという看護師の方々は、その後はどんな感じでした?

上原さん  最初の1〜2か月はみんな不安でしたけれど、とにかく次から次へと患者さんが来て数が増えていきますので、そんなことも言ってられない状況でした。

そうした中で唯一良かったと思ったのは、当院は大学病院で感染症の専門家が多くいましたので、最新の根拠のある情報を伝えてもらえたことです。世界的に見て医療者が感染してしまうのは、適切な防護具が不足して使うことができなかった場合と、正しく防護具を着て、正しく脱ぐことができなかった場合で、「正しくできている人で感染した人は今のところいないよ」と言われました。

それを聞いて、とにかく正しく防護具をつけるトレーニングを2週間に1回必ず全員がやっているうちに、本当に誰も感染しないということが分かって来ましたので、だんだんと患者さんのお部屋にいる時間が長くなったり、行く回数が増えていきました。

そうなると次第に「患者さんをこのままにしてはいけない」「死の恐怖と戦っている患者さんに医療者として出来る事はないか」とスタッフが少しずつ変化していくのが分かりました。

本田 2週間に1回トレーニングをするというのは、みんなが防具の付け方をお互いにやってみて指摘しあう感じですか?

上原さん  そうですね。必ず2週間に1回は誰かに自分の防護具の着方、脱ぎ方をチェックリストに沿ってチェックしてもらうようにしました。実際に着る際も、心配なときは誰かに「これで大丈夫?」と確認して「大丈夫だよ」って言ってもらうようにしています。

本田 顔の防護というのは基本的には東京医科歯科大学はどのようにやってらっしゃったんですか?

上原さん  頭にキャップをかぶって、顔はN95マスクとフェイスガードです。

本田 そうですか。フロアにはスタッフの方は何人いらっしゃったんですか?

上原さん  陽性病棟の方は患者数25でしたので、スタッフは40名ぐらいいました。「疑い病棟」の方は9床でスタートしましたので、スタッフは20人弱ぐらいでしたが、感染が拡大して「疑い病棟」も20床近くまで増えましたので、スタッフも同じ40名ぐらいまで増えていきました。

最初の3か月ぐらいは当初から外科病棟にいたスタッフが担当でしたが、長く続けるのは心の健康面も心配ということもあり、看護職全体の中で希望するスタッフが、2か月ごとにローテーションで入れ替わるという仕組みもできました。病棟スタッフの約半数は担当を固定し、残りの半数は2か月のローテーションの方が入る体制で1年間やりました。

本田 そうすると、すごくたくさんの看護師さん達が関与して下さったわけですね。

上原さん  そうですね。ローテーションで来る方達はやはり最初は不安でいっぱいですので、来る前にコロナウイルスとはどういうものか、防護具の着方のトレーニング、あとメンタルサポート体制もあるということをオリエンテーションして来て頂いて、自宅から通っていてご家族への心配がある方は寮に入って頂くように態勢を整えてもらいました。

本田 すごいですね。スタッフの中でコロナウイルスに感染した方はいらっしゃいましたか?

上原さん コロナの患者さんをみている陽性病棟と「疑い病棟」で感染した人はいませんでした。未だに1人もいません。

本田 素晴らしい。インフェクションコントロール(感染制御)が本当に上手くいったのですね。

上原さん そうですね。スタッフが自分の生活でも「三密」を避けて気をつけた成果だと思っています。

本田 そうなんですね。先ほど「心の健康のためにもローテーション」というお話がありましたけど、病棟の師長さんのローテーションはなかったのですか?

上原さん 半年くらいの時に「どうしますか?」と打診がありましたが、スタッフがやっているのに私だけ替わるのもという気持ちもありましたので、とにかく1年間はやり遂げようと思いました。

2年目も続けるつもりでいたんですが、コロナウイルスとは長い付き合いになるでしょうから、多くの管理者が対応を経験する方が組織として強くなるとのことでローテーションになりました。

最初は無理だと思ったユマニチュード

本田 これまで上原さんは東京医科歯科大学でユマニチュードを広げて下さってきたわけですけれど、この病棟でのユマニチュードはどうでしたか?

上原さん 最初はやはりユマニにチュードはコロナ患者さんには無理かなと正直思いました。目と目が合う距離まで近づくことは感染のリスクもありますし、触れると言うこともみんな躊躇するだろうなと思いました。一番大切なのは働いてるスタッフの健康ですので、「ユマニチュードをやってください」とは絶対に言えないなと思いました。

ただ時間の経過の中で、簡単には感染しないことが実感としてあったことと、少しずつコロナウイルスというものが分かって来て、いろいろな薬の効果も出てくるのを目の当たりにすると、スタッフの患者さんに対するケアの仕方が変わってきました。もう少し何かケアが必要ではないかという風に皆が考え始めました。

本田 具体的にどのような行動が始まったんでしょうか?

上原さん ちょうどその頃、高齢者施設でのクラスターで、かなりご高齢の患者さんを受け入れることとなりました。いらっしゃった患者さんは末期がんの方もいらっしゃいましたし、誰かの手を借りないと生活ができないADL(日常生活動作)介助の必要な方もいらっしゃいました。

そうなると「触れない、近寄らない、短時間で接する」では、患者さんの安全を守れません。(コロナ以前に)普段やっていたように関わっていかないと、私たちの役割が果たせないとスタッフ自身も思ったようで、毎日、カンファレンスでどうしたら良いか話し合いが行われるようになりました。

そうしたときに「時間は短めにしましょう」とか「あまり近寄らないようにしましょう」という人が1人もいなかったというのが、すごくありがたいことだったと今、改めて思います。

本田 そうなんですね。自分たちの安全が大前提ですけれど、その中で患者さんにとって一番必要なことは何かと考え、良いケアを提供することについてのディスカッションをされた。

上原さん そうですね。ご高齢の患者さんが急に施設から病院に来て、せん妄状態になられたり、叫んだりする方がいらっしゃって、そういう方々を放っておくというのはやはり自分達も心が痛むんですよね。

なんとか環境を整えたり、少しお話し相手になったりということをスタッフが自然とやり始めまして、みんなが同じケアを提供できるように話し合いをしていった中で、スタッフから「こんな風なのはどうでしょうか」「こんな風にケアしたら、すごく患者さん変わって良さそうです」とどんどんアイデアが集まって、「私感染怖いんです、嫌です」みたいな人はいなかったですね。

「その人らしさ」に目を向けるきっかけに

本田 たとえば、せん妄が大変になっていた方にどんな変化がありましたか?

上原さん 80代の女性の患者さんがいらしたのですが、飼っていた猫がすごく気になっていたようで、猫の名前をずっと叫び続けていらっしゃいましたので、猫の写真をインターネットで探してプリントアウトして部屋中に貼ってみたんです。

そうすると「自分の猫じゃないけど、この猫は何とかね」とか「色がうちのとは違うわ」と猫をきっかけに少しずつ会話が成立するようになり、せん妄が少しずつ減りました。私たちと関係性ができると、今は施設ではなく病院に入院しているということも理解してもらえるようになりました。

リハビリの介入もすることになったときには、廊下に猫の写真を貼って、「廊下に猫を見に行きましょう」と誘い出して歩いてもらい、リハビリにつなげるアイデアも生まれました。患者さんの生活や好きな物を知り、それをケアの中に取り入れて、「その人を看る」という風にスタッフが変わっていったと思います。

大学病院ですと、どうしても疾患から看護を考えることが多いんですが、コロナウイルスの肺炎ということはもう分かっていて「まずはコロナの治療」を行います。それ以外は患者さんの「その人らしさ」に目を向ける時間も逆にあったというところが大きかったのかなと思います。

本田 そうなんですね。ユマニチュードの「立つ」介助をスタッフの方とやったりすることはありましたか?

上原さん 実際の立ち方を教えるということは、今回、コロナの患者さんに対してはしていません。ただ、どうしてもお一人では転びそうな方を支える際の支え方、掴んだりするのではなく、ちょっと背中に手を添えるぐらいでという触れ方みたいなことを伝えてはいきました。

本田 それは廊下を歩かれたりするときですか?

上原さん そうですね。あとは、患者さんも鬱状態になりやすかったので、猫の話のようにとにかくポジティブな話をいっぱいするようにと伝えました。一生懸命に患者さんの話を聞き、患者さんの興味を引くところにきっかけを作って、ポジティブな事を伝えたりしていました。

本田 病院で前向きな事を話すのはなかなか難しいですよね。スタッフの方は上手になられましたか?

上原さん はい。「今日はこんなことを話したらすごく喜ばれたんですよ」というコミュニケーションがスタッフステーションの中ですごく盛んになりました。

その方は本来、施設に戻る予定だったのですが、その施設がコロナ患者は受け入れないということになり、他の施設探しもかなり難航しました。4か月目ぐらいに転院先が見つかったのですが、その頃にはご本人が「この病院か自宅以外は嫌だ」とおっしゃるようになっていましたので、自宅退院を目指すことになりました。

なんとか昼間はお一人でトイレに行けるぐらいになったところで、ご家族にガラス越しに廊下を歩いている姿を見て頂いたら、「こんなに動けるなら帰ってきても大丈夫」と言ってくださったので、最終的には自宅退院になりました。

本田 とても素敵なお話をありがとうございます。25床の中には若い方もいらっしゃったのですよね? 若い方はどんな感じでしたか?

上原さん 若い方は、社会と繋がれるスマホなどをお持ちなので、ご自身のスマホで、ご家族やお友達、会社とやり取りしながら、それでも「本当に治るのかな」と不安はお持ちでしたけれど、割と短期間で回復される方がほとんどでした。ですからADLの介助というのはなく、スタッフが行って話をして、少し不安を和らげるという関わりが多かった感じではあります。

大切なのはケアをする側の関わり方

本田 「疑い病棟」のご入院の方で印象に残った方はいらっしゃいますか?

上原さん 当院に緊急入院する方はあらかじめPCRの検査ができていませんので、CTを撮って肺炎がありそうだという方は全員「疑い病棟」にまず入院します。あとは、入院してきた患者さんで入院後1日目にコロナが分かった場合、同室にいた他の患者さんは濃厚接触者になりますので、そういう方が「疑い病棟」に移っていらっしゃるということも時々あります。

そうした中で、脳外科の患者さんで、脳梗塞で手術をされた後、右の半身麻痺がありなかなか言葉も出づらい状況の方が移って来られた時がありました。

経管栄養で鼻にチューブが入っているのですが、どうしても自分でチューブを抜いてしまう、自分で動こうとして転ぶということを繰り返すので体幹抑制と手の抑制とミトン(手袋)をしていて、看護師がケアをしようとすると、唾を吐きかけたり蹴飛ばしたりするため「なかなか難しい患者さんですよ」と言われました。

ただ、どんな患者さんなのかと情報を集めてみると、手を抑制されているので足しか抵抗する手段がない、言葉がうまくしゃべれないので「嫌だ」と言うことを唾を吐きかけて表現してるのではないかと感じました。

ちょうどコロナが始まる前の1年間、当院のユマニチュードの基礎コースを受講したスタッフに担当をお願いしました。そのスタッフにユマニチュードの基本の「見る、話す、触れる、立つ」、そして5つのステップを意識して関わってみて欲しいと伝えたんです。そうしたら、そのスタッフから「何の抵抗もなくケアが終わりました」と報告がありました。

「ぜひそれを他のスタッフに、具体的にどういう風にしたら良かったのかを伝えて」とお願いしたら、看護計画に「1.ノックをする。2.目を合わせて合ったら声をかける」とすごく細かく、ユマニチュードをあまり知らないスタッフでもその通りやれば何とかなるように計画を書いてくれたのです。

そして、皆がその通りにケアをしたら、ほとんど患者さんの抵抗がなかったので、「やっぱり私たちの関わり次第だった」ということに全員が気づいたんです。

隔離病棟では、経管栄養中にずっと患者さんをみていることはできませんので、その間だけはちょっとミトンをつけさせて頂きましたけど、それ以外はもうフリーにしていました。進んでいなかったリハビリの拒否もなくなり、特に難しいと言われていた口腔ケアもスムーズに出来るようになりました。

何より顔がすごく穏やかになられて、テレビを観ながら一緒に歌を歌ったりもして、考えられないような変化が隔離期間の2週間で起きました。元の病棟に戻った時には、患者さんの変わりように皆が驚いていたそうです。

本田 「何をやったんですか」って言われそうですよね。

上原さん 大事なのは相手がちゃんと私たちが言ってることを理解したか確かめてからやることと、触れる順番ですよね。敏感なところに先に触れると「嫌だ」という意思表示として、蹴られたり、唾を吐きかけられたりするということなので、「嫌がる口腔ケアは本当に最後にすることでスムーズに行きます」と伝えたら、移動先の病棟もそれに従って行ったようで、前ほど拒否がなくケアができたというお話も聞けました。

本田 怖い患者さんがいると、ケアする方も身構えますし、戦いモードで挑むと本当にバトルになりますものね。

上原さん それを患者さんが感じて、余計にバトルがエスカレートするということなんだと思います。本当に一番最初にユマニチュードをやってくれたスタッフには感謝してます。

本田 そうですね。お話ででた院内のユマニチュード研修というのは、上原さんと内山(亜紀子)さんとでやってらしたプログラムですか?

上原さん はい。3年目の若いナースだったんですけれど「やってきます」ってすごく張り切って行ってくれて、結果も良かったので、笑顔で病室から帰ってきたのが今でも忘れられないです。

本田 いいお話ですね。いきなりですが、せっかくですので内山さんにもお話を伺っていいでしょうか。内山さんがこの1年間でお気づきになられたことはありますか?

内山さん そうですね。私はコロナの外来診療センターにいましたが、熱があるということで病院に来たら、いきなり防護具を着た看護師が対応することにびっくりされる患者さんや、怒ってしまう患者さんが非常に多くいらっしゃいました。

事前に説明をするように医師や看護師に言ってあるんですけれども、やはり聞くのと実際に見るのとでは違うようで、防護具というのを目にされると患者さんは非常に驚く、不安を感じるということが分かりました。

ですので、外来では、まずは丁寧な対応、挨拶をしてできるだけ目線を合わせて話すというところから始めるということに注意をしていました。ただ患者さんに対応するのは短時間でしたので、ユマニチュードのケアというところまでは言えないかもしれません。

先ほど上原さんもお話ししていたように、適切に防護具を着ていれば感染はしないということは時間が経過する中で学んでいましたので、近い距離でも対応したり、触れるということはやれていたと思います。

コロナだからこそユマニチュード

本田 そうなんですね。ありがとうございました。急にお尋ねしてすみません。上原さん、他に皆様と共有していただけるお話はありますか?

上原さん 内山さんが防護具の話をしましたけれど、やはり、防護具を着ていると、患者さんにとっては誰が誰だか分からないだろうと思います。急な入院で、病室という無機質な空間に独りきり。来るのは防護具を着た誰だか分からない、見たこともない医療者で、しかも皆同じに見える。患者さんは孤独感や不安、恐怖を誰もが感じるだろうと思います。

簡単に感染しないと分かってからは、目が見える距離まで近づいていくようにしましたが、マスク越しですと声がやっぱり聞こえづらかったり、はっきり聞こえなかったりということも非常に多くありました。

ご高齢の方ですと、耳が遠いけれど補聴器を家に置いてきてしまったという方も結構いらっしゃったので、聞こえやすいよう紙コップを使って耳元で話す工夫をしていました。スタッフには、紙コップ越しでも決して大きな声で話さないこと、穏やかに話すことを心がけるように伝えました。

それと、内山さんがコロナの外来に勤務されていて、入院が決まると「ちょっと認知力があまり良くなさそうです」という患者さんの情報を教えてもらえることもありましたので、そういう時はスタッフにも「しっかり目を合わせて穏やかに話してね」と伝えていました。

最初の対応が駄目だとその後のケアが上手く行かないことが多いので、ファーストタッチに内山さんからの情報があったことはすごく助かりました。

本田 ユマニチュードのインストラクターのお二人が、病院の入り口にいてくださったというのは嬉しいお話で、私たちもその良いご経験を分けて頂く素晴らしい機会に恵まれて、とても嬉しいです。

上原さん コロナの病棟は、隔離された特別な環境だからこそ、ユマニチュードが逆に必要だなとも感じました。通常のときでも、病気になって来られる方は不安があると思うのすが、それ以上にどうなるか分からない未知のウイルスなので、患者さんは計り知れない不安と恐怖があるかと思います。

さらに、自分の状況、自分がどうなっているかもよく分かっていらっしゃらない高齢の方も大勢来られたので、なおさらユマニチュードの「見る、話す、触れる」は必要だと思いましたし、防護具を着ていると関係性を築くのがすごく難しいので、意識して関係性を築くことが患者さんの不安を和らげることに繋がるということが分かったのは、逆にコロナの経験をして良かったなとも思います。

本田 本当に貴重なお話をありがとうございます。

※後編では参加者の皆様との質疑応答をご紹介します

(構成・木村環)

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