会員勉強会「フランス認証施設を見学しての気づき、学び」開催レポート

日本版のユマニチュード認証制度がスタートしました。会員コミュニティ「雨宿りの木」にて、すでに制度があるフランスの施設を見学した方々をお招きして開いた勉強会「フランス認証施設を見学しての気づき、学び」の模様をお伝えいたします。認証制度がもたらした素晴らしいケアの現場のお話に参加者の皆様からも次々と質問が寄せられました。

スピーカーの皆様

〈ファシリテーター〉

大島寿美子理事 北星学園大学教授

本田美和子代表理事

〈スピーカー〉

田中とも江理事 社会福祉法人こうほうえん ケアホーム西大井こうほうえん施設長

吉川 左紀子理事 京都芸術大学学長 同文明哲学研究所長

森山由香チーフインストラクター 施設認証準備委員会委員長

盛真知子エグゼクティブインストラクター

中野目あゆみインストラクター

施設全体が自由で温かな雰囲気

座談会は今年1月、60人を超す会員の皆様に参加いただき開催しました。スピーカーの皆様の自己紹介に続き、まず本田代表理事がフランスのユマニチュード認証制度について「ユマニチュードを学び、実践する方々から、自分たちの成長と自分たちが施設で作り上げた生活の場が良いものであることを確認したいという声が自然発生的に上がったことで生まれた制度」と解説。ユマニチュードが目指す「よいケア・よい生活の場」を形に表した「5原則」と「生活労働憲章」(詳しくはこちら)を実現するための基準を達成し、認証を取得した施設が26施設、さらに100を超す施設が取得に取り組んでいることを説明しました。

大島さんがフランスの認証施設を見学した時の印象について尋ねると、スピーカーの皆様からは「施設の皆さんが自由で生き生きとしていて、“その人らしさ”が大切にされていると思いました」(中野目さん)▽「入所されている方もスタッフの方々も心がとても安定していると感じました」(吉川さん)▽「スタッフが皆、入居者の気持ちに合わせた“待つ”技術が出来ていて、立ち居振る舞いがキレイで驚きました」(田中さん)——と、施設全体が温かく、自由な雰囲気に満ちているという発言が相次ぎました。

その理由として、日本版認証制度作りに携わっている森山さんは「ユマニチュードの技術だけをお仕着せで学んでできることではなく、認証に取り組むことで職員全員がユマニチュードの5原則や価値観を理解して、ユマニチュードという共通言語で考え、自ら行動しているからでは」と分析。「ユマニチュードという包括的なコミュニケーションの技術を通じて、優しさを伝え合い、お互いが幸せの贈り物をし合っているから、皆さんが笑顔で自由な雰囲気を醸し出していると思います」と語りました。

ハード面に工夫も

参加者の皆様からは「フランスの認証制度はどのようにできたのでしょうか」「認証施設の部屋には鍵はあるのでしょうか」「フランスでも施設導入に課題はありますか」など多くの質問が寄せられました。

このうち「部屋の鍵」については、フランスの認証施設ではそれぞれの部屋に鍵があり、その鍵はその部屋の入居者本人が持っていると本田代表理事が説明。この話を受けて田中さんが「私たちの施設でも入居者ご本人が鍵をお持ちです。例えば他の方の部屋に入ってしまうようなことが起きることもありますが、(ユマニチュードの導入で)最近はスタッフも入居者同士もそれを許し合える、お互いが優しくなっている感じがあります」と自身の施設でのユマニチュード導入の経験を披露してくださいました。

加えて、森山さんが施設での環境整備もユマニチュード認証には必要であることを説明。フランスの施設では、認知症の入居者が自分の部屋が分からなくなり、他の部屋に入ることを防ぐために、部屋のドアにご自身の若い頃、輝いていた頃の写真や家族の写真を貼ったり、愛称を掲げたり、ドアノブがしっかりと見えるようなスポットライトを設置したりというハード面の工夫が様々にされていることを紹介しました。

地域全体が優しい街に

最後に認証制度に期待することとして、盛さんが「訪れた町営のフランスの施設では、ユマニチュードの施設に入居して暮らすことが、大きな家に住んでいる町の住民として認められていました。ボランティアや町の人たちに暖かく見守られ、入居者が自由に地域に出かけています。日本でも認証制度の導入で地域全体が優しい街になる。そんなことが実現したら嬉しいと思います」と発言。

本田代表理事は「良いケアを実現するということは相手のためでもあると同時に自分のためでもあるということを、スピーカーの皆様から色々な形で表現していただいたと思います。自分たちのためにもなるケアを実現する手段としての施設認証制度だと、改めて思いました」と挨拶し、会を締めくくりました。

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