奈良市で「優しさを伝えるケア技法 ユマニチュード®講演会(第2回)」が開催されました。

2022年11月16日(水)奈良市の西京公民館ホールで、六条地区社会福祉協議会が主催する「優しさを伝えるケア技法 ユマニチュード®講演会(第2回)」が開催されました。六条地区にお住まいの主に認知症の方のご家族を対象とした講演会で、前回は、オンラインでの開催でしたが、今回は、対面での実施となり、会場には約50名がお集まりいただきました。

日本ユマニチュード学会の永井美保子理事が講師を務め、奈良医療センター看護師で、ユマニチュード認定インストラクターの山西智美さん、上林久子さんも皆さんとの意見交換に加わりました。

まず、主催者である六条地区社会福祉協議会の大森護会長のご挨拶から始まりました。「高齢化が社会問題となり、認知症、MCIが増えていく中、お役に立てることをしたいと考えていたところ、国立奈良医療センターの当時の院長よりお声がけ頂き、院内で開催されたジネスト先生の講演を聞くことができ、 “魔法の介護法” だと、いい意味でのショックを受けました。家庭内で、認知症の介護で苦労をしている方、一人でも多くの方に聞いてもらいたいと思っていたところ、あるご夫妻から福祉にお役立て下さいとご寄附をいただき、開催したのがユマニチュードの講演会です。」とユマニチュードの講演会を開催するきっかけをお話しました。

講演では、講師自身がユマニチュードに出会って救われた張本人であり、亡くなった父が認知症を発症し、86歳の父を82歳の母が介護する老々介護の様子や、娘としての自身の体験を語りました。多くの人から寄せられる「家族への介護は、どうしても優しくできない、うまく介護をすることができない」という声に「介護をしていることで、十分にあなたは優しい人です。問題は、その優しさが相手に伝わっていない、相手が理解してくれていないこと。相手に伝わる、理解してもらうには、コツがある。誰でもできる、このコツの考え方と技術がユマニチュードです。」と語り、ユマニチュードの哲学や技術について、さまざまな映像を交えながら説明をしました。

質疑応答では会場からの「介護業界で働いていてユマニチュードを実践して、認知症の患者さんへの成功体験を得ている。しかし、家族の介護に悩んでいる。両親ともに80歳を超えて、認知症の母を父が介護している。父がかっとなって怒り、母に手をあげてしまいます。どうしたらいいのか? 身内の介護で感情が先に出た時にどうしたらいいのか?」という質問に、インストラクターの山西さんが、「身内だから自分の言っていることをわかってもらいたいと期待する気持ちになってしまう。それは寄り添う優しさから発せられるもの。まずは、お父さんの気持ちを大切に理解してあげたい。認知症は脳の病気。年だから年相応に物忘れするということとは違う。年をとって、物忘れすることの延長に認知症があるのではなく、脳が疾患として委縮して、覚えておけない病気。足の骨が折れた人に、まっすぐ歩きなさいというのと、認知症の人に、さっき言ったでしょ、覚えてないの!というのは、同じこと。忘れることを責められると本人もなんで私は覚えていないんだろうと不安になって、お互いが気まずくなる。お父さんの気持ちも大切にしつつ、お母さんの行動は病気からくるもので、これを改善するのは難しいということをお父さんとご一緒に受け止めていただき、どうしたらいいかを考えられるようなかかわりができたらと思う。」とアドバイスをしました。上林さんは、「私も、病棟で患者さんを見ているつもりで、見てなかったと思う。私は現在、コロナ病棟にいるが、これまでも結核病棟にいて、必ずマスクしないといけない状況だった。特にコロナ病棟では、帽子まで被って目元しか見えない状態で、誰だかわからないし、それが故のトラブルもあった。でも、ユマニチュードの技法を使って、ちゃんと目線を合わせて、声をかけて、処置をしますよと話をすることで伝わることができた。また何カ月もお風呂を拒絶する入院患者さんについて、調べてみると、昔はお風呂が好きだったが、以前の施設ではお風呂が冷たかったり、お風呂で痛いことをされたり、季節によっては、ゆず湯などあって、これが便に見えて嫌だった、などお風呂に入らなくなった理由があったということもあった。介護は、絶対こうしたらいいですよという答えはない。相手は人なので、一人ずつ方法は違います。実践して、小さな成功体験を積み重ねていけば、前向きになれます。私も失敗と成功を繰り返しながら実践しているので、皆さんもそのようにしていただけたら」と話しました。

講演会後も会場の皆さんと講師やインストラクターとのやり取りがあり、対面で直接交流することができた貴重な機会となりました。

日本ユマニチュード学会では、ユマニチュードについて知っていただく第一歩として、講演依頼を受け付けています。オンライン、対面どちらでも可能です。ご興味のある方は、是非、お問合せ下さい。

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