2022年11月16日(水)奈良市の西京公民館ホールで、六条地区社会福祉協議会が主催する「優しさを伝えるケア技法 ユマニチュード®講演会(第2回)」が開催されました。六条地区にお住まいの主に認知症の方のご家族を対象とした講演会で、前回は、オンラインでの開催でしたが、今回は、対面での実施となり、会場には約50名がお集まりいただきました。

日本ユマニチュード学会の永井美保子理事が講師を務め、奈良医療センター看護師で、ユマニチュード認定インストラクターの山西智美さん、上林久子さんも皆さんとの意見交換に加わりました。

まず、主催者である六条地区社会福祉協議会の大森護会長のご挨拶から始まりました。「高齢化が社会問題となり、認知症、MCIが増えていく中、お役に立てることをしたいと考えていたところ、国立奈良医療センターの当時の院長よりお声がけ頂き、院内で開催されたジネスト先生の講演を聞くことができ、 “魔法の介護法” だと、いい意味でのショックを受けました。家庭内で、認知症の介護で苦労をしている方、一人でも多くの方に聞いてもらいたいと思っていたところ、あるご夫妻から福祉にお役立て下さいとご寄附をいただき、開催したのがユマニチュードの講演会です。」とユマニチュードの講演会を開催するきっかけをお話しました。

講演では、講師自身がユマニチュードに出会って救われた張本人であり、亡くなった父が認知症を発症し、86歳の父を82歳の母が介護する老々介護の様子や、娘としての自身の体験を語りました。多くの人から寄せられる「家族への介護は、どうしても優しくできない、うまく介護をすることができない」という声に「介護をしていることで、十分にあなたは優しい人です。問題は、その優しさが相手に伝わっていない、相手が理解してくれていないこと。相手に伝わる、理解してもらうには、コツがある。誰でもできる、このコツの考え方と技術がユマニチュードです。」と語り、ユマニチュードの哲学や技術について、さまざまな映像を交えながら説明をしました。

質疑応答では会場からの「介護業界で働いていてユマニチュードを実践して、認知症の患者さんへの成功体験を得ている。しかし、家族の介護に悩んでいる。両親ともに80歳を超えて、認知症の母を父が介護している。父がかっとなって怒り、母に手をあげてしまいます。どうしたらいいのか? 身内の介護で感情が先に出た時にどうしたらいいのか?」という質問に、インストラクターの山西さんが、「身内だから自分の言っていることをわかってもらいたいと期待する気持ちになってしまう。それは寄り添う優しさから発せられるもの。まずは、お父さんの気持ちを大切に理解してあげたい。認知症は脳の病気。年だから年相応に物忘れするということとは違う。年をとって、物忘れすることの延長に認知症があるのではなく、脳が疾患として委縮して、覚えておけない病気。足の骨が折れた人に、まっすぐ歩きなさいというのと、認知症の人に、さっき言ったでしょ、覚えてないの!というのは、同じこと。忘れることを責められると本人もなんで私は覚えていないんだろうと不安になって、お互いが気まずくなる。お父さんの気持ちも大切にしつつ、お母さんの行動は病気からくるもので、これを改善するのは難しいということをお父さんとご一緒に受け止めていただき、どうしたらいいかを考えられるようなかかわりができたらと思う。」とアドバイスをしました。上林さんは、「私も、病棟で患者さんを見ているつもりで、見てなかったと思う。私は現在、コロナ病棟にいるが、これまでも結核病棟にいて、必ずマスクしないといけない状況だった。特にコロナ病棟では、帽子まで被って目元しか見えない状態で、誰だかわからないし、それが故のトラブルもあった。でも、ユマニチュードの技法を使って、ちゃんと目線を合わせて、声をかけて、処置をしますよと話をすることで伝わることができた。また何カ月もお風呂を拒絶する入院患者さんについて、調べてみると、昔はお風呂が好きだったが、以前の施設ではお風呂が冷たかったり、お風呂で痛いことをされたり、季節によっては、ゆず湯などあって、これが便に見えて嫌だった、などお風呂に入らなくなった理由があったということもあった。介護は、絶対こうしたらいいですよという答えはない。相手は人なので、一人ずつ方法は違います。実践して、小さな成功体験を積み重ねていけば、前向きになれます。私も失敗と成功を繰り返しながら実践しているので、皆さんもそのようにしていただけたら」と話しました。

講演会後も会場の皆さんと講師やインストラクターとのやり取りがあり、対面で直接交流することができた貴重な機会となりました。

日本ユマニチュード学会では、ユマニチュードについて知っていただく第一歩として、講演依頼を受け付けています。オンライン、対面どちらでも可能です。ご興味のある方は、是非、お問合せ下さい。

今年度の資格更新期日(3月末日)が迫ってまいりました。

下記の連絡事項をご確認の上、更新手続きを行ってください。

申請方法はこちら

連絡事項

・先日、杉本さまよりご案内いただいた研修会参加は、インストラクター資格更新の活動実績の10ポイントとなります。

・学会のキャラバン講師は「草の根交流会講師」10ポイントとなります。

なお、質問事項や、期日までに間に合わないなどご事情がある場合は、Slack等を通じて杉本リーダーに直接連絡、もしくは事務局までご連絡ください。

←前編から続く

3日目:10月19日(水)

ケアの見学・参加・意見交換、施設内見学(認知症のある方が暮らす区画、移動自転車)、各施設が実施する年次自己評価の講義がありました。

ケアの見学・参加では、再び3つのグループにわかれて、前日と異なる、それぞれ別の区画でケアの現場に入らせていいただきました。前日と同様に、ユマニチュードの技術を用いて、朝のケアを実施(着替え、整容、朝食のために食堂へ向かう等)しました。本人が自分でできることは自分で行い、難しい場合は代替案を提示しながらケアを行っています。それぞれの部屋には、家具やDVDや編物等、自分の好きなものを飾ったり配置していました。ある入居者の方がカフェオレなど飲み物を準備してくださったり、ご自身で下膳している方もいらっしゃいました。以前は職員が下膳していましたが、現在は可能な場合は入居者ご本人が実施しているそうです。さいごに職員から相談のあったケースについてディスカッションしたり、各グループのインストラクターの感想を共有しました。

施設内見学では、認知症のある方12名が暮らす区画を訪ねました。ちょうどリンゴのコンポートを調理中で、リンゴのいい香りが漂っていました。入居者の希望にあわせて各種アクティビティを実施しており、参加しても途中でやめることも自由だそうです。家のような雰囲気をつくるため職員は名札をつけていませんでしたが、職員は全員私服なので家族や訪問者が誰が職員か分かるように職員の顔写真を区画内に掲示していました。本人と、家族や職員がペアで乗る電動自転車も見学しました。車いすに座ったまま自転車の前方に乗ることができ、施設の外に出ることも可能です。

各施設が実施する年次自己評価では、取り組みの進め方の例についてラ・メゾン・デ・ジャンヌのケースを交えながら説明していただきました。

・3月 推進プロジェクトチームを立ち上げる:To Doを明記したカレンダーを作成する(評価基準の章・節ごとに担当者を決める)

・4月 全職員へ周知:全職員に向けて関係者各位で担当者へ連絡する

・5 月、6月 観察と面談:ラ・メゾン・デ・ジャンヌでは、リーダー研修を受けたリーダーが施設内評価を実施し、施設オリジナルのチェックリストを1日かけて埋める(Asshumevieもチェックリストを作成して提供しているが、利用は任意)

・7月、8月 研修機関による分析

・9月 研修機関から分析結果を受ける

フランスでは施設が審査を申請するまで研修機関が対応して、原則、認証取得の準備が整った段階で審査を申請します。現時点では、日本では進め方等の認証準備中の相談も含めて審査機関・ユマニチュード認証制度本部が対応しています。

この日は、今回の訪問に関して施設管理者エリスさん及び本田代表理事が、地元メディアの取材を受けました。地域に開かれた施設として情報発信にも積極的に取り組んでいます。


手編みのマフラー

ケアへ参加

認知症の方が暮らす区画

自転車

外観

周囲の様子

休憩時間に質問

4日目:10月20日(木)

最終日は、認証審査に関して多岐にわたる質疑を行いました。その一部をご紹介します。

Q.認証準備会員になってから最初の自己評価を実施してオンラインシステムにアップするまでの期間は?

A.取り組みを始めたら、すぐに継続的に登録する

Q.不合格の場合のフォローの在り方は?

A.書類を提供したり口頭で説明する。

例:調査員の訪問後レポート(記載項目・内容の一部)

・調査員がいいと思った点(職場環境として・生活の場として等の項目別)
・改善の余地ありの点・それに対する提案とその理由
・個人の仕事についてのフィードバック
・全体へのフィードバック
・まとめ:いい点、改善すべき点<提案事項は5年後の認証更新時までに改善する(研修機関にも共有して研修を受ける)>

Q.ボランティアの受け入れはどのように行われているのか?

A.ボランティア団体を通じて受け入れて、ワークショップと同じように計画を立てて、適切な振る舞い方ができるように40分前後の研修を行う(哲学、4つの柱)。

Q.家族向け説明はどのように行っているのか?

A.1時間ユマニチュードについて説明会を実施しており、ユマニチュードに関するマンガのような冊子を配布しているところもある(冊子を配布するだけだと質問がたくさんくるため説明会を実施している)。

Q.認証取得前後で地域の変化はあるか?

A.地域に開かれた取組みをするため、認証取得の取組み開始時点ですでに変化は始まっている。認証を取得した際には地域で表彰式を開催して政治家・報道関係を呼んでいる。


たくさんの質問

丁寧な説明

まとめ

【全体】

今回、認証に取り組むにあたっての課題はフランスでも日本でも基本的に共通していると感じました。それは「組織全体で取り組む」「その取り組みを継続する」という点です。

組織全体での取り組みとその継続を実現するには、ユマニチュードの哲学と技術をしっかりと定着させると同時に、リーダーシップや組織の在り方、プロジェクトの進め方等、一般的な組織論やマネジメントの手法が必要となってきます。

【認証施設の組織での取り組み】

今回、訪問したユマニチュード認証施設ラ・メゾン・デ・ジャンヌの組織での取り組みの進め方は大変参考になりました。

まず、経営層が組織として認証の取り組みを通して何を実現したいか決定して、全職員と共有する。そして、具体的に取り組みの担当とスケジュールを明確にして、職員が理解しやすい資料を作成したり、問題解決のアクションチームの実行や、研修等の日次・週次・月次・年次でPDCAサイクルを回していました。

また、施設見学では、よい点だけではなく改善すべき点を含めた説明が印象的でした。常によりよい取り組みを目指す姿勢が継続した取り組みにつながると感じました。

そして、職員向けの研修やサポートする個別プログラムが手厚いことが働きやすさや職員の定着につながり、この点でも、組織としての取り組みの後押しとなっているのではないかと思います。

【審査機関の在り方】

審査機関は、よいケア・よい生活の場の実現を目指す認証を目指す施設と仲間である、という姿勢を改めて感じました。とくに、評価基準を満たしている・いないという点にのみ着目するのではなく、施設の自己評価をベースに、よりよい取組みを提案するという点を大切にして、認証準備会員に併走し取り組みの応援を続けてまいります。

また、今回、日本の研修機関のメンバーでもある認定インストラクターが同行しており、審査機関と研修機関の役割分担と協働の重要性を確認しあうことができました。現在、日本では認証関係の研修を含めて研修体系を再構築中ですが、今後、役割分担をわかりやすく整理していくとともに一層連携を強めてまいります。

さいごに

今回の充実したフランス認証施設訪問は、事前の準備と当日あたたかく迎えてくださったフランスの皆さま、そして日本の認証制度を応援してくださっている日本財団様のおかげで実現できました。心より感謝申し上げます。今回得られた知見を活かして、今後もよりよい制度づくりに取り組んでまいります。ありがとうございました。

せせらぎで行っているユマニチュードの取り組みについてお話ししたいと思います。

ご利用者様の趣味を活かす活動

まず、ご利用者様の趣味を活かす活動です。

このご利用者様は生け花を昔からいけており、毎週月曜日にホールのお花をいけていただく取り組みを毎週行っています。

初めは、「できないよ」とおっしゃっていましたが職員と一緒にやっていくうちに自らお花を切ったり積極的に行えるようになりました。今後も趣味を活かした活動を継続していきます。

ホールの模様替え

ホールの模様替えを行いました。

テレビや窓の景色が見やすいようにテーブルの向きを替えたり、車椅子での移動がしやすいようにスペースを確保したりと10年以上同じ配置だったホールの雰囲気がガラッと変わりました。

また、食事スペースとは別に誰でも自由に使用できるくつろぎスペースを新設しました。利用者様も職員も見慣れたホールが新しく生まれ変わる事で良い気分転換になりました!

これからも利用者様と職員が共に生活しやすいように皆さんの意見を取り入れながらよりよい生活空間作りに取り組んでいきます!!

クリスマス会

12月にご利用者様に季節を感じていただく為に、2つのイベントを企画しました。まず、クリスマス会を開催しました。

せせらぎでは、施設内の装飾だけでなく中庭にイルミネーションも設置しています。約10年間、恒例のイベントとして、多くのご利用者様から好評です。

特に、コロナ禍で外出や面会制限があるため、外の景色を楽しみながらクリスマス会の季節が来たことを感じていただけたかと思います。

餅つき

こちらも、毎年恒例のイベントです。

職員だけではなく、ご利用者様も実際にお餅をついて、つきあがったお餅に触れていただき、懐かしさを感じながら、新年を迎える準備を一緒にしていただくことができました。

今後も、季節を感じていただけるイベントを開催していきます。

インストラクター向け自己研鑽のための研修会についてのご案内

皆さまいかがお過ごしでしょうか。コロナ禍が続き、大変なことも多いかと思います。さて、今回、教育委員から以下の研修会をご案内させていただきます。

本研修はオンラインで実施いたします。本ページに記載されている「事前準備」をお読み頂き、当日スムーズに受講いただくための事前準備をお願いいたします。

日程 令和5年3月15日 17:30~19:00
内容 今回は、自己研鑽のための研修として、調布東山病院の意思決定支援チームの皆さまをお迎えし、意思決定に必要なプロセスなどをお話いただきます。
私たちがユマニチュードの技術を使い、本人の意思を大切にしながら届けているケアとコラボできる内容だと考え、この研修会を企画しました。
今回の研修会参加は、年度末に控えているインストラクター資格更新の活動実績の対象となります。
会場 Zoomによるオンライン講座
参加費 1,000円
申込方法 申込:3月8日(水)
※参加費用のお支払いをもって参加申し込みとさせて頂きます。
※お申し込み後、zoomの参加方法をお知らせします。
→参加費用のお支払いはこちら
お問合せ 一般社団法人日本ユマニチュード学会 事務局
(メール)info@jhuma.org

インストラクター自己研鑽プロジェクトリーダー
杉本・安藤
参加費用のお支払いはこちらから

事前準備

PC、タブレット、スマホ等の端末をご用意の上ご参加ください

各自の端末に予めZoomアプリのインストールをお願いします。
講座の構成上、PC(パソコン)でのご受講を推奨いたしますが、タブレット、スマートフォンからのご受講も可能です。

充電が可能で、高速通信が可能な電波の良い場所で受講してください

長時間通してZoomに接続いただきます。長時間安定して高速インターネット接続(有線LAN/Wi-Fi環境)が可能で、端末を充電できる場所で受講できるかどうか事前にご確認をお願いします。

事前にZoomのテスト接続を実施してください

Zoom接続のご不安を解消するため、事前にZoomのテスト接続を実施して、問題なくご使用いただけるかご確認ください。講座当日は、お名前部分を本名(例:日本花子)にしていただき、カメラ、マイクをオンにした状態で受講いただきます。名前の設定やカメラとマイクのオンオフができるかどうかをご確認ください。

視聴URLのご連絡

開催日の2日前までに、お申込いただいた方のメールアドレスにZoomのURLが記載されたご案内メールをお送りします。講座当日はそちらの接続情報を参照の上、Zoomにアクセスしてください。

同室で複数名ご参加される場合

同室で複数の方がそれぞれの端末で参加される場合、個別にマイク付きイヤフォンをご準備頂き、ハウリングしないか事前にZoomテストをお願いします。

注意事項

・操作のわからない方には、主催者側でマイクをミュートにするなど対応をさせていただきます。
・運営の改善、向上を目的として、運営上の録画を行わせていただきますが、本利用目的外で使用すること、外部へ提供することはございません。

2022年10⽉17⽇(月)から10⽉20⽇(木)にフランスのユマニチュード認証施設を訪問してまいりました。秋が深まりつつあるこの時期、美しい緑に包まれたノルマンディ地方の認証施設ラ・メゾン・デ・ジャンヌ(EHPAD La Maison de Jeanne)でたくさんの素敵な出会いと学びがありました。

訪問の目的

今回の訪問の目的は、ユマニチュード認証施設を訪問し、①施設運営・ケア実践の⾒学及びケアの実習を⾏うとともに、②認証制度委員⻑から認証制度の審査に関するレクチャーを受けることです。

訪問施設の概要

ラ・メゾン・デ・ジャンヌは、EHPAD(Établissement d’hébergement pour personnes âgées dépendantes(老人ホーム))です。設立は、なんと1373年。ホスピスとして始まった建物を利用して運営しているそうです。認証取得は2018年。180名の高齢者の方が8つの区画に暮らしています。職員は160名、そのうちケアをする人は90名です。施設管理者のエリス・ガンビエさんは、ユマニチュード認証制度を管理する団体Asshumevie の代表でもあります。


ラ・メゾン・デ・ジャンヌの外観

施設管理者のエリスさんと森山認証制度本部長

みんなで記念撮影

訪問メンバー

フランスからユマニチュードの考案者のロゼッタ・マレスコッティ先生(ジネスト・マレスコッティ研究所 所長) 、フランク・デヴュヴュさん(ジネスト・マレスコッティ研究所 国際部長)の2名が参加。日本から総勢8名、日本のユマニチュード認証制度へ多大なご支援いただいている日本財団から袖山啓子様、日本ユマニチュード学会から本田美和子代表理事やユマニチュードの研修と認証のチームが参加しました。

1日目:10月17日(月)

朝到着すると、職員の皆さんと入居者の方、そしてたくさんの桜と日本の国旗に迎えられました。建物のあちらこちらに日本をイメージした装飾がされ、入居者の皆さんから今日のためにつくったオリジナルの歌のプレゼントや、さらに入居者の方の自作の詩の朗読のサプライズがありました。初日から職員・入居者の皆さんからあたたかい歓迎を受けました。

1日目のスケジュールは施設内見学と講義でした。

午前中は、私たち訪問者も時々一緒に参加しながら、ボールをつかったエクササイズや、転倒時に他に手段がない場合に利用する体を起こすための道具の実演などをみせていただきました。また、地域の方も利用できる美容室や、入居者・家族の方や職員が利用するカフェ、売店、ラウンジの案内をしていただきました。午後からは、職員及び地域の方の子ども2ヵ月〜6歳を対象とした10名以内の小規模保育所と、入居者で認知症の周辺症状がある方向けの院内デイケアを見学。保育所とデイケアは隣で、子どもたちは月2〜3回入居者と一緒に食事をしたり入居者と同じ活動プログラムをするなど交流しています。

講義では「施設概要とユマニチュード導入による変化」「Asshumevieと認証のアプローチ」について学びました。現在、ユマニチュードを導入している施設は7,500。そのうち103施設が認証取組み中で、26の認証施設があります。

実際に現場に入ってケアを行なう場面では、「黒子とマスター」を実践しました。実際に訪問した、丸藤さんが飛び入りで感想をくださいました。日本語で話しかけても、メッセージは伝わるなあと実感したそうです。相手の手からもそれがよく伝わってきたそうです。

食事について、嚥下食は見た目も匂いも日本で見るものとは違っていて、他の食事も手でつかみやすい形やサイズになっていました。食べながら歩くのもOKとしているとのことでした。アップルパイもおいしいし、しっかりりんごの風味が感じられたそうです。栄養面だけでない工夫がたくさんなされていたそうです。

ラ・メゾン・デ・ジャンヌにおける導入による取り組みの変化について、

・移動時にすぐ車いすを利用していたけれど歩いていけるよう歩行の付添いをするようになった

・ケアする側の利便性だけを考えて導入していた食事用エプロンを廃止

・夜間必ず3回実施していた部屋への巡回をドアを開けずに部屋の外から耳で様子を確かめて睡眠を妨げないようにした 等

また、身体拘束が43%(2014年)から4.4%へ減少(2022年)、自分の部屋の鍵を持っている方が6割から9割へ増加等の数値の変化などの説明がありました。

職員向けの取り組みとして、

・調子のよくない職員には外部専門家も介入して個別プログラムを策定し本人が希望するプロジェクトを提案している

・平日より週末のほうが職員数が少なかったため週末にメインでケアをする人を3名増員した

・天井走行リフトなど介助のための機材も多く導入する 等

職員が誇りを持ち、そして働きやすい環境づくりをしています。

離職率は低く、離職する理由は、全く異なる業種や職種に転職したり家が遠くて通えない場合のみ、とのことです。

一般的な認証へのアプローチとして、施設内の次の3つの組織によって進めるという説明がありました。

①経営会議:組織の方針の決定権を持つ経営層によって構成し、組織全体として取り組みやその方針を決定する

②推進プロジェクトチーム:実働マネジメント・働く人をサポートする人等、多職種部門横断的なメンバーで構成し、ケアの現場で必要なことを具体的に決めていく

③アクションチーム:テーマを決め適切な人数の実働メンバーで構成し、問題となっている事柄を検討して解決していく

①~③それぞれの情報が双方向に流動的でオープンであることが重要、行動が常にビジョンに立ち返りビジョンに沿っているか点検が必要。

認証の取組みを維持するためには、プロジェクトの必要性を職員全員が知ることが重要であり、シフトが変わるときに適切な申し送りを行ったり、研修を受けたリーダーと一緒に現場で学び実践を評価するなどが大切である、とのことでした。


玄関には桜と日本の国旗

日本語で「ようこそ」!

廊下にたくさんの提灯

皆さまの合唱

詩の朗読

みんなでエクササイズ

体を起こす道具

カフェと美容室

2日目:10月18日(火)

ケアの見学・参加、食事の説明や厨房見学、認証の訪問評価の講義がありました。

ケアの見学・参加では、3つのグループにわかれて、それぞれ別の区画で実際のケアの現場に入らせていただきました。ユマニチュードの技術を用いて、朝のケアを実施(着替え、整容、朝食のために食堂へ向かう等)しました。その他にも、決まった質感の生地の布を触っていると落ち着く入居者の方のために「ジョセフのバッグ」という異なる質感の生地やファスナー等がついて収納できる形態のバッグを職員が作成してお渡ししているなど、現場での様々な取り組みについてもお話を伺いました。

食事は、嚥下食が必要な方向けには、通常食と同じメニューと食材で、ビーツやりんご等食材の風味はそのままで形状を変えて提供しています。また、カトラリーをつかわない方、つまんで食べる方向けには、つまみやすいように表面を少し固めにつくっています。いずれも美しい見た目で盛り付けに工夫されていました。通常食と嚥下食のデザート・リンゴのケーキの食べ比べをしましたが、人によっては嚥下食の見た目や食感のほうが人気でした。厨房も見学させていただきました。保温・冷蔵機能のある台車で厨房から各区画へ運んで現地で食器につぎ分けて配膳する仕組みになっていました。

認証の訪問評価の講義では、施設側の取り組みと審査機関であるAsshumevieの対応について説明がありました。施設ではユマニチュードの取組みを継続するため様々な研修を計画的に実施しています。認証制度では、施設の自己評価を経て、調査員による訪問調査後、審査会による評価結果が出ます。訪問前から訪問後までの具体的な流れ、調査員の役割や訪問時スケジュール、評価について詳細な説明がありました。基本的に日本の認証制度はフランスと同様の仕組みですが、認証の種類は、フランスが1種類に対して、日本はブロンズ、シルバー、ゴールド(フランスの認証相当)と少しずつステップアップしていく3種類となっています。


グループわけ

ケアに参加

ジョゼフのバック

ビーツの前菜

シェフの説明

リンゴのデザート

嚥下食と食べ比べ


→後編へ続く

福岡市の救急医療機関で救急患者の対応を行う医療職を対象にユマニチュードのオンライン講座を実施します。

福岡市ではユマニチュードの普及促進を行っており、平成30年度からは福岡市消防局の救急隊員を対象にユマニチュード講座を実施し、現場でのスムーズな搬送につながっているとの声を受けています。

この度、救急搬送患者を受け入れいただいている医療機関の皆様にもお役立ていただけるよう、コミュニケーションケア技法ユマニチュードを学ぶ機会を設けました。認知症患者だけでなく、広く救急搬送者にご利用いただける技法です。是非ご参加ください。

本講座はオンラインで実施いたします。本ページに記載されている「事前準備」「注意事項」をお読み頂き、当日スムーズに受講いただくための事前準備をお願いいたします。

日程 令和5年2月22日(水)14:00~16:00
内容 認知症の記憶の仕組みを知り、ユマニチュードの考え方から「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱について具体的な技法を学ぶ
講師:ユマニチュード認定インストラクター
会場 Zoomによるオンライン講座
対象 福岡市にて救急患者の対応を行う医療職に従事している方
参加費 無料
申込方法 申込期間:令和5年1月20日(金)~2月19日(日)
※先着順で受け付け、定員になり次第締め切りとなります。
※募集期間は終了しました。
定員 100名
お問合せ 一般社団法人日本ユマニチュード学会 福岡講座窓口
(メール)fukuoka@jhuma.org

福岡市 高齢社会部 認知症支援課
普及啓発推進係 中村、佐藤
(電話)092-711-4891
主催
福岡市は、認知症になっても、住み慣れた地域で安心して自分らしく暮らせるまち「認知症フレンドリーシティ」を目指し、認知症コミュニケーション・ケア技法ユマニチュードの普及に取り組んでいます。

※募集期間は終了しました。

事前準備

PC、タブレット、スマホ等の端末をご用意の上ご参加ください

各自の端末に予めZoomアプリのインストールをお願いします。
講座の構成上、PC(パソコン)でのご受講を推奨いたしますが、タブレット、スマートフォンからのご受講も可能です。

充電が可能で、高速通信が可能な電波の良い場所で受講してください

長時間通してZoomに接続いただきます。長時間安定して高速インターネット接続(有線LAN/Wi-Fi環境)が可能で、端末を充電できる場所で受講できるかどうか事前にご確認をお願いします。

事前にZoomのテスト接続を実施してください

Zoom接続のご不安を解消するため、事前にZoomのテスト接続を実施して、問題なくご使用いただけるかご確認ください。講座当日は、お名前部分を本名(例:日本花子)にしていただき、カメラ、マイクをオンにした状態で受講いただきます。名前の設定やカメラとマイクのオンオフができるかどうかをご確認ください。

視聴URLのご連絡

開催日の2日前に、申し込みメールアドレスにZoomのURLが記載されたご案内メールをお送りします。講座当日はそちらの接続情報を参照の上、Zoomにアクセスしてください。

同室で複数名ご参加される場合

同室で複数の方がそれぞれの端末で参加される場合、個別にマイク付きイヤフォンをご準備頂き、ハウリングしないか事前にZoomテストをお願いします。

注意事項

・フランス本部との契約ならびに著作権とプライバシー保護の観点から、写真撮影、ビデオ録画、音声録音、画面キャプチャなどの行為はいずれも厳禁となっております。徹底をお願いします。
・上記の禁止行為、参加者の方々の視聴に支障をきたす行為、迷惑行為、その他、運営上支障を及ぼす行為等が行われた場合は、該当者の方のZoomへの接続を停止することがあります。あらかじめご了承ください。
・操作のわからない方には、主催者側でマイクをミュートにするなど対応をさせていただきます。
・運営の改善、向上を目的として、運営上の録画を行わせていただきますが、本利用目的外で使用すること、外部へ提供することはございません。