日本ユマニチュード学会第3回総会 開催レポート
日本ユマニチュード学会の第3回総会を9月末、インターネットを通じたオンライン配信にて開催いたしました。
ダイジェスト映像
開催レポート
今回のテーマは「つなげようケアのバトン」。生存科学研究所との共催で行った市民公開講座と併せまして2日間で延べ600人以上の皆さまが参加して下さいました。本総会の大会長を務めた杉本智波・日本ユマニチュード学会学術研究委員長のインタビューで総会を振り返ります。
熊本保健科学大学
キャリア教育研修センター認定看護師
教育課程脳卒中看護分野専任教員
脳卒中看護認定看護師
ユマニチュードチーフインストラクター
今回の大会開催にご協力いただきました皆さま、そして参加くださった皆さまに改めてお礼を申し上げます。新型コロナウイルスの影響下でも歩みを止めずにより良いケアを考えたいと思ってくださる皆さまのお力添えで、3回目となる日本ユマニチュード学会総会を無事に開催することができました。
1日目は生存科学研究所との共催で「家族をつなぐユマニチュード」をテーマとした鼎談、ユマニチュード考案者のイヴ・ジネスト 先生の基調講演を、2日目は会員総会として「ユマニチュードの再現性と継続性を目指して」をテーマにシンポジウムと17演題の口頭発表を行いました。(第3回学会総会の詳細はこちらから)
昨年に引き続きオンラインでの開催となりましたが、口頭発表にはこちらの予想を上回る数の申し込みをいただき、会員の皆様がユマニチュードの実践を重ね、さらにそれを仲間の皆様に伝えたいという思いを持っていただいたことを嬉しく感じました。少しでも双方向になるよう、4人のインストラクターを座長として、質疑応答ができるように工夫をいたしましたが、いかがでしたでしょうか。
今大会は、全体テーマとして「つなげようケアのバトン」、加えて2日目の会員総会では「ユマニチュードケアの再現性と継続性を目指して」というテーマを掲げました。
今、ユマニチュードは医療や介護の現場、家族をケアする市民の方々へ、インストラクターの私たちの想像を超える勢いで広がっています。これはユマニチュードを実践した皆さまが「これは大事だ」と確信されたからこそだと思います。
ただ、ユマニチュードが広がることはとても嬉しいことですが、医療や介護の現場、施設、ご家族それぞれが個々のレベルで行っているユマニチュードが繋がっていかないと言う大きな課題があるように思います。ユマニチュードのケアのバトンがどこかでこぼれ落ちてしまうこと、今日届けたケアが明日は届かないということは、何よりもケアを受ける当事者の皆さまがお辛いことでもあります。
ユマニチュードを学んだ方なら誰しもが直面する「ケアが繋がらない」という壁。その壁にぶつかりながらもケアを諦めないで学会に集ってくださった皆さまと、どうしたらケアのバトンを繋げていけるか共に考え、その積み重ねを今後も共にやっていきましょうと言う思いを、このテーマに込めました。
そうした意味で、2日目のシンポジウムで示されたご家族、訪問看護、施設でのケアの連携の事例は、まさに今後のユマニチュードの浸透や広がりにとても重要なことを示していたと思います。シンポジウムの中でご家族が毎日毎日、一生懸命ご自身が正しいと思うケアを試行錯誤して行っていたけれども上手く行かなかった、という言葉は、良いケアを届けようとする者なら誰もが共感したのではないでしょうか。
そこにユマニチュードの技術、方法論がもたらされたことで、ご家族が変わり、ご本人が変わり、ケアマネージャー、訪問看護師そして施設へと良いケアのバトンが関わる方々皆で繋がれて、良い循環が生まれていく、非常に理想的な姿だと思いました。こうした素晴らしい事例をご報告いただいたことに心より感謝をいたします。
また口頭発表では、ユマニチュードの哲学に基づいて、施設や病院の皆が同じ価値観で同じ目標を見定めて試行錯誤することが、利用者さん、患者さんに届くケアへと実を結んだという事例が多く、とても勉強になりました。来年、日本でもユマニチュードの施設認証制度がスタートしますが、何よりも大切なユマニチュードの哲学とそれを達成するための技術という在り方が示されていると思います。
日本ユマニチュード学会の設立の大きな目的でもあります、ケアを実践している現場からの発表や科学的根拠の積み上げが、ユマニチュードに対する正しい理解に繋がると私は考えます。時に精神論として捉えられてしまうこともあるユマニチュードを、良いケアを達成するための有意義な手段であると多くの方に知っていただくためにも、この学会を職域に関わらない実践や研究成果を発表できる場としたいと強く思った大会となりました。
次年度の大会がどういう形式になるか現段階では分かりませんが、ユマニチュードを学び実践されている会員の皆様のお役に立てるような内容を考えて参ります。
※写真撮影、発表時のみマスクを外しています。
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