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ニュースレター「ユマニチュードの絆」vol.3 | 日本ユマニチュード学会|人間らしさを尊重したケアを共に社会へ

ニュースレター「ユマニチュードの絆」vol.3

ユマニチュード考案者イヴ・ジネスト先生、ロゼット・マレスコッティ先生からのメッセージ連載

本内容はフランスのユマニチュード導入施設向けに配信されるニュースレター「ユマニチュードの絆」より転載したものです。ユマニチュード開発に至る経緯やジネスト先生たちの考えを知っていただく一助になると嬉しいです。

 

「なぜ商標を登録しているのか?」

非常によくいただく質問に、「なぜ、商標登録をしたのですか?」というものがあります。どうしてこのような選択をしたのか、説明します。

私たちが病院や施設で働く専門職を対象に指導を始めた頃、私たちはケアや病気に関する知識はもちろん、病院がどう運営されているかについても何も知りませんでした。研修生たちが私たちの先生になって彼らが学んできたケアについて私たちに教えてくれ、私たちは未知の世界を発見していきました。

病院や施設の世界では、当時、良いケアをする人というのは、全て患者さんの代わりにやってあげる人でした。患者さんの清拭はベッドで行うように学校で教えられ、それが現場で実践されていました。ケアの間中、「動かないでください」、「もうすぐ終わりますよ」、「あなたのためなんですよ」という言葉が聞かれました。そこでは、私たちが体育学の観点から持っていた、動くことを良しとする文化が根底から覆されていました。

教育者として、体育学の専門家として、私たちは動くことが健康に資すると知っています。動くことのトレーニングをし、それを繰り返し、動き続ける事のみが、人間としての大きな機能を維持させてくれます。しかし、ケアを受ける人達は、清拭も食事も睡眠も生きるすべてがベッドの上でした。椅子に腰掛けることができる患者さんは稀でしたし、その大半は布で椅子に固定されていました。

そこで、私たちは「ケアの新しい形を考案しよう」と決めたのです。清拭の際に、可能な時はいつでも患者さんにベッドの足元に立ってもらうことにしました。車いすをやめて立って移動していただき、ケアをする人はそこに寄り添うようにアドバイスしました。1982年には、私たちは、「亡くなるその日まで立つ®」を提唱しました。すでに実際のケア現場での研修で得られた結果では、寝たきりの方の80%が、本来は寝たきりになる必要がなかったと推定されました。そこで、私たちは一日20分立つ時間を作ることで寝たきりを防ぐことができるか、計測を開始しました。「亡くなるその日まで立つ®」は、こうして私たちの第一の強いコンセプト、これまでと異なるケアを行う第1歩となりました。

「ケアの技術は予防の技術になる。」

「亡くなるその日まで立つ®」を目指すためには、ケアについて、着衣介助、道具使用などの何十もの技術を開発しなければなりませんでした。そして、新しいケアの仕組みを提案する必要がありました。さらに並行して、私たちは非常に優しい触れる技術、後に「優しく触れる®」に結実する技術を開発しました。

1982年から20年間、私たちは言語的・非言語的コミュニケーションの現実を学び、新しいコミュニケーション技術を専門職の技術として確立するする必要性に気づきました。「オート・フィードバック®、知覚の連結®」の誕生です。これは本人ができることをケアを通じて評価するための清拭(これを評価保清と呼んでいます)、一連の手順に基づいた清拭など、これまでとは全く異なる考えに基づく新しいコンセプトのケアでした。そして、これによって暮らしの概念が大きく変容することになったのです。

私たちはこれまでの活動を通じて、私たちのアプローチを共有し、文章にし、開示してきました。インターネットの登場と同時にサイトを立ち上げ、私たちの知識をオンラインに載せました。しかし、私たちのコンセプトがその出典を示さずに発表されたり、文章に載せられたりすることが頻発し、私たちの成果がそっくりそのまま何ページにもわたって著述され、それを他の人が自分の業績として発表していることに遭遇するようになりました。

1998年、カナダ・ケベック州のパートナーとの出会いが決定的なものとなりました。私たちのコンセプトの重要性や成果に魅かれ、彼らは私たちに、私たちの成果全体を「ジネスト・マレスコッティのケア技法」と名付けることを提案してきました。こうして、最初のIGM(ジネスト・マレスコッティ研究所)がモントリオールで誕生しました。

カナダのパートナーは、このコンセプトは私たちが自ら教えたインストラクターからしか学ぶことができないと考え、コンセプトを商標登録することを提案してきました。

コンセプトを商標登録したことは、批判や非難を招きましたが、私たちは後悔していません。何故でしょうか?

何故なら、私たちは自分たちの30年間の仕事の成果を「キス療法」などと呼ぶ人が出現する事態に直面したからです。私たちは自分たちの成果の価値を貶めたくないからです。

何故なら、「ユマニチュード」がメディアで取り上げられたことで、私たちが会ったことも教えたこともない偽ユマニチュードインストラクターが研修を実施するという、私たちのコンセプトを盗用した例が引き起こされたことを繰り返したくないからです。

何故なら、患者さんや施設関係者がスタッフを教育したいと考えるときに、ユマニチュードの教育の評判、メディアや科学誌等で発表された内容など、手にする情報が常に正しいものであってほしいからです。

今日、「ジネスト・マレスコッティ・ケア技法®」と「ユマニチュード哲学®」の認定インストラクターのみが、IGMのネットワークに所属して働いています。私たちが訓練し、私たちが認定した質の高いインストラクターが組織化されたネットワークのもとで働くことで、ユマニチュードを選択してくれた方々へのケアの質を保証します。

最後に、大学・看護学校などの教育機関は登録商標保護対象の例外であることをお伝えしておきます。専門教育において学生がユマニチュードを存分に学んでくれることが私たちの望みです。もちろん、その教育者が私たちからユマニチュードについて学んでおくことが前提です。

ユマニチュードはケアをする皆さんのためのものです。皆さんが私たちを信頼し続けてくださることに感謝いたします。

ロゼット・マレスコッティ

イヴ・ジネスト

Le Lien de l’Humanitude より

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