パーキンソン病の母とオンラインでのコミュニケーションを上手く取る方法

「家族介護について語り合う会」より

会員限定コミュニティ「雨宿りの木」にて、1月よりスタートした「家族介護について語り合う会」。この会にて参加者の皆さまから寄せられたご相談やお困りのことに、ジネスト先生、本田美和子代表理事が回答した解決策やアドバイスを皆さまと共有いたします。それぞれの現場やご家庭でのケア、ユマニチュードの実践にご活用ください。

※参加者の皆さまのプライバシーに配慮し、実際の内容を一部変えている部分があります。

Q.パーキンソン病の母とコミュニケーションを上手く取る方法はありますか

コロナ禍にあり別居している母親とLINEやZoomといった機能を使って話をしています。パーキンソン病に加え耳の具合も悪くなっているようで、誰と話しているかは分かるようですが、会話が成立しません。補聴器も使っていますが難しいようです。上手くコミュニケーションを取る方法はありますか。

A.「待つ」「しっかり情報を届ける」ことを心がけて下さい

まず、病気の特徴をよく知っておくことが大切です。届いた情報をご本人が認識してその内容を理解するまでの時間がかかるのがパーキンソン病の特徴です。反応や返事が戻ってくるまでに時間がかかることを知って、それを「待つ」ことがパーキンソン病の方々と過ごすご家族にとっては重要です。

このことは記憶の仕組みから考えて見るとわかりやすくなります。
※図参照(「家族のためのユマニチュード」誠文堂新光社より)。

人は、学校で習ったことや何かに関する出来事、嬉しかったり悲しかったりした思い出などを「長期記憶」という倉庫の中に入れて保管しています。人は何かをするときに、この倉庫にある知識を取り出し、「短期記憶」として利用しながら行動しています。

例えば「私は本田です」と自己紹介を聞くと、その名前は脳に届き短期記憶に少しだけとどまり、その後は長期記憶の倉庫に入ります。翌日に再び「本田さん」がやってきたとき、脳はその長期記憶の倉庫から「本田さん」という情報を短期記憶に取り出して、「この人は本田さんだ」と思い出して応答しています。

パーキンソン病では、長期記憶の倉庫の中に情報はあるのですが、それを取り出すのが難しくなります。そのため、取り出しやすくするためにヒントを出します。例えば名前を思い出してもらいたいときに「本田さんですか? 鈴木さんですか?坂本さんですか?」と選択肢を示すと、記憶の倉庫から取り出しやすくなります。

アルツハイマー病の場合は、記憶を長期記憶に留めておくことができないことが病気の特徴なので、倉庫の中は空っぽです。ですから、いくらヒントを示しても答えることができません。

これを踏まえて、お母様には病気の特徴に合ったお手伝いをします。言葉の理解や反応までに時間が必要なので、質問をしたら少なくとも3秒、場合によっては12秒ぐらい待ちます。また、答えが欲しいときには、いくつか選択肢を出してみます。

また、しっかりと情報を届けるための工夫も必要です。遠くにお住まいのお母さまとオンラインで話をする、という今回の場合は、周りの音を遮断して、しっかり音を届けることができるヘッドフォンをまず試してみてはいかがでしょうか。さらに、マスクを外して、こちらの表情を見みてもらうことも、届ける情報量を増やせるので良いと思います。

記憶がなければ動作をすることができません。私たちが歩けるのは、歩き方つまり、筋肉の動かし方やバランスの取り方が記憶として貯蔵されていて、それを倉庫から取り出しているからです。パーキンソン病では、記憶をすぐに取り出せないので、体をすぐに動かすことができません。

「腕を上げて」と頼んだとき、体の筋肉をどう動かせば腕が上がるかを瞬時に思い出せないので、腕をすぐに上げることができません。そこで、動きを思い出すためのヒントを出します。「お母さん、右腕を上げますよ。ここが右腕ですよ」と触れながら、少し下から支えて動きを助けると、動きについてのヒントとなり、動かしやすくなります。

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