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職場でユマニチュードを実践するのが自分だけ。どの様にモチベーションを保てばいいでしょう? | 日本ユマニチュード学会|人間らしさを尊重したケアを共に社会へ

職場でユマニチュードを実践するのが自分だけ。どの様にモチベーションを保てばいいでしょう?

「現場での課題共有会」より

会員限定コミュニティ「雨宿りの木」にて、医療・看護・介護などケアの現場で働く会員の皆さまと語り合う「現場での課題共有会」が2月からスタートしました。この会に寄せられた実践者ならではの悩みや疑問に、ジネスト先生、本田美和子代表理事が回答した解決策やアドバイスを皆さまと共有いたします。ご活用ください。

※参加者の皆さまのプライバシーに配慮し、実際の内容を一部変えている部分があります。

Q.介護士をしていますが、施設でユマニチュードの研修を受け実践しているのが私一人だけです。

ユマニチュードでケアを行うと利用者の方に「気持ちがいい」「嬉しい」と言われ、不穏の症状も減りますが、別の職員がケアをするとまた症状が出てきてしまいます。こうした状況でどうモチベーションを維持していけばいいのか教えて下さい。

A.「感情の力」を使い、まずは仲間を作りましょう

ユマニチュードは言語と同じで、施設でただ一人だけが知っていても上手くいきません。皆が同じ言語を知らないと会話ができないのと同様です。そのような状況についてご提案できることは二つあります。

一つは、ユマニチュードの技術を用いるとケアが上手くいくことを同僚に気づいてもらうことです。それがユマニチュードを職場に浸透させる第一歩となることがとても多いです。ただし、上手くいくことが周囲の人にネガティブな反応を生んでしまうこともありますので注意が必要です。理屈では分かっていても、感情的に受け入れられない、つまりどんなに言葉を尽くして説明しても「何か嫌だな」と思われたら、もう受け入れてもらえないのです。

この理由は人間の脳の情報処理の仕組みから説明できます。人は外から入ってきた情報を視床で受け取ります。その情報はまず感情を司る扁桃体で「好き」か「嫌い」かが評価され、その後に大脳皮質で精密な分析が行われます。まず扁桃体で「好き」と評価されなければ、良い情報として受け取ってもらいにくくなってしまいます。相手に「この人は好ましい人だから、話を聴こう」と思ってもらうことが、自分の話を受け入れてもらえる下地を作る重要なステップになります。

まずは職場の親しい方に少しユマニチュードのことを話してみるのはいかがでしょうか。「こういう風にやると自分は良かったよ」と提案してその人にやってもらう。そして、少しでも上手く行ったら、大袈裟なくらいに「素晴らしい」「すごく上手くいったね」と褒めるのです。そうした反応を受け取ると相手に「嬉しい」という感情が湧きます。

そして、あなたが提案したケアを同僚にやってもらい、それが上手くいくと、もう一人、嬉しい人が増えます。ケアを受けた方です。一つのケアで、あなたと同僚とケアを受けた方の3人が「嬉しい」と感じるのです。ユマニチュードを用いたケアで、「嬉しい」という感情の動きが広がることを現場の方に学んでいただくのが、ユマニチュードを職場に広げる一つの入り口になると思います。

二つ目は、やはり一人での取り組みには限界がありますから、施設全体、組織としてユマニチュードのケアをするという流れを作ることが重要です。職場の部門長や施設長にユマニチュードのケアの良い点を、例えば日本ユマニチュード学会の資料などを材料としてお話していただくのも良いと思います。

ただし、その時にも注意すべきことがあります。例えば、あなたがケアをすると上手くいくけれど、他の人だと拒否をされる、上手くいかない、という文脈で説明をすると、あなたが優秀で他の人が駄目な人という印象に受け取られてしまう可能性があります。

自分がユマニチュードの技術を使ったときは上手くいったけれど、使わなかったときには差があったというように、自分の中での「できる・できない」という観点で説明すると、相手の心により響くことでしょう。

ユマニチュードはチームで実践するものです。スポーツに例えるならば、一人一人に技術がないと試合になりませんが、チームとしてまとまらないと試合には勝てません。あなたが素晴らしいユマニチュードプレイヤーであることも重要ですが、仲間を作ることが必要です。私たちのことを分かってもらうために、まずは仲間に自分を好きになってもらうことを忘れないでください。先にお話しした「感情の力」を上手く使うことです。

ユマニチュードのケアが技術で構成されたものであり、決して魔法ではないことと同じように、ユマニチュードのチームを作るのも魔法のようにはいきません。長期的な視野に立ち一つ一つ目標をクリアにしていくことです。

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