介護職員の指導方法に悩んでいます

「現場での課題共有会」より

会員限定コミュニティ「雨宿りの木」にて、医療・看護・介護などケアの現場で働く会員の皆さまと語り合う「現場での課題共有会」が2月からスタートしました。この会に寄せられた実践者ならではの悩みや疑問に、ジネスト先生、本田美和子代表理事が回答した解決策やアドバイスを皆さまと共有いたします。ご活用ください。

※参加者の皆さまのプライバシーに配慮し、実際の内容を一部変えている部分があります。

Q.介護職員の指導方法に悩んでいます。

有料老人ホームでユニットのリーダーをしています。介護職員の1人が威圧的な態度で命令口調で話すため、利用者さんから「精神的にとても傷ついていてる」という苦情がありました。本人にはその自覚がなく、「他の職員も同じことをしているから」と言って改める気持ちもないようです。どう指導したら良いか悩んでいます。

A.施設全体で目指すものを決め「憲章」を作りましょう

このようなトラブルで一番重要な問題は、施設全体として「この施設が何を目指しているのか」ということが、職員に共有されていないことです。苦情の出たその職員の方は、そこにいる人に食事を与え、おむつを替え、着替えをするのが私の仕事だと思って毎日職場に来ているのだと思います。

残念ながら介護の仕事をそのように考えて仕事をしている人は、実は世界中にたくさんいます。ケアが終わった後で、相手がすごく悲しい思いをしたり、泣いたりしていても、「私はやることはやった」とそういう人たちは言うのです。

その職場が何を目指しているのかを文書にして「憲章」とし、施設全体の方向性を明確に示さなければ、そこで働く一人一人の行動を変えていくことはできません。皆が大切に思っていることを言葉にし明文化して、それを実現していくのです。

ここで重要なのは、そうした言葉をインターネットで探してダウンロードするのでなく、組織の長や部門の長とそこで働いている職員がチームになり、数カ月の時間をかけてそれぞれの立場から「私たちはこれを大切に思う」「私たちにとって価値あるものはこれだ」と、自分たちが目指すものは何かということを話し合い、決定することです。

もし「入居者の方が幸せになる場所にします」という一文があった場合、先ほどの職員の方は、ケアを受けた方が幸せではないわけですから、施設が目指していることを達成できない状況を作っている、憲章に反する行動があったのだと指摘する根拠ができます。その憲章に外れた行動を取り続ける人には、その組織で働くことを止めてもらうことも、時に必要になるかもしれません。

さらに、虐待は身体的なものだけではないことも強調しておきます。人の心を突き刺して死なせてしまうような言葉は存在します。

ご自分ではできないことがある方々、誰かに「依存」しなければならない方が介護施設にはいらっしゃり、その援助をすることがケアをする人の仕事です。「依存」というのは悪いことではありません。私は、毎日子供と電話で話すことに幸せを感じていて、ある意味では子供に依存していると言えますが、それは素晴らしく良い関係です。

しかし、自分が嫌いな人に依存しなければならない状況になったらどうでしょうか。それはほぼ地獄です。「臭い」「汚い」と言いながらおむつを替えれば、聞いている人にはそれは言葉の虐待に他なりません。

おむつを部屋に替えに来た人が、「臭くてやってられない」と言いながら窓を開け放った現場に立ち会ったことがありますが、聞いたご本人は涙を流していたのです。言葉でなくとも、荒々しく窓を開けるという行為だけでも、ケアを受けるご本人には虐待行為となるのです。なぜなら自分が人間的に扱われていない、尊厳が損なわれていると感じるからです。

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