「ノックをしたら利用者さんにうるさいと言われた」と怒って諦めてしまう職員がいました・・
「現場での課題共有会」より
会員限定コミュニティ「雨宿りの木」にて、医療・看護・介護などケアの現場で働く会員の皆さまと語り合う「現場での課題共有会」が2月からスタートしました。この会に寄せられた実践者ならではの悩みや疑問に、ジネスト先生、本田美和子代表理事が回答した解決策やアドバイスを皆さまと共有いたします。ご活用ください。
※参加者の皆さまのプライバシーに配慮し、実際の内容を一部変えている部分があります。
Q.「ノックをしたら利用者さんにうるさいと言われた」と怒って諦めてしまう職員がいました・・
介護の現場で働いている看護師です。施設でユマニチュードの導入が始まっていますが、「ノックをしたら利用者さんにうるさいと言われた」と怒って諦めてしまう職員もいて、ユマニチュードをどう伝えていけばよいのか思案しています。
A.なぜその技術を行うのか、行動の意味を考える哲学こそが何より重要
ノックのお話はユマニチュードを学び始めたときに起こりやすい失敗です。でも、そこにはとても大切な視点があります。なぜその技術を行うのか、行動の意味を考える哲学こそが何より重要であるということを示しているからです。
相手を尊重することとは何か、自由とは何か、優しさとは何かというユマニチュードの哲学を理解していれば、「うるさい」と言われるようなノックをすることにはなりません。
ユマニチュードを専門職の方へ教えるとき、技術的なことはもちろん必要ですが、それを最初にしてしまうと、相手に大してその技術を一方的に行ってしまう、「ケアをしてあげます」という権力を一方的に発動する関係に陥りかねません。
まずは、利用者や患者の方を敬い、尊重する心を持つことが大切です。私たちが直面する問題の多くは、こうしたケアをする立場の権力を持って相手に対峙しているということに原因があります。
ノックはもちろん良い技術ですが、それが不適切な状況はもちろんあります。その時は、私たちの基本的な考え方は変えずに行動を変えるのです。技術を行うことがゴールではありません。
何のためにノックをするかというと、音を出すためではなく、「これからあなたの所に行っても良いですか」ということを聞くためです。それを実現するための行動がノックなのです。
ケアのときに言葉を溢れさせるようにという技術もありますが、ケアを受ける方に「うるさいから黙ってください」と言われたら、それは黙るべきなのです。決めるのはケアを受ける相手です。
「私たちはケアを提供する人です」「ケアを届けます」と考えると、相手は「ケアを貰わなければならない人」になってしまいます。そうした「ケアをする人(ケアギバー)」と「ケアを受ける人」という一方向的な関係ではなく、ケアを中心にお互いが「ケアを分かち合う人(ケアシェアラー)」と考えるべきであると思います。
関係というのは双方向性が大切です。お互いがやり取りする関係がないと成り立ちません。ケアを「シェアする」という概念は、これまでのケアの歴史にはありませんので仕方のないことですが、私はこれは歴史的な誤りであったと思っています。
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