ケアを拒否する方や攻撃的な方にはどのようにケアをすれば良いでしょうか。

「現場での課題共有会」より

会員限定コミュニティ「雨宿りの木」にて、医療・看護・介護などケアの現場で働く会員の皆さまと語り合う「現場での課題共有会」が2月からスタートしました。この会に寄せられた実践者ならではの悩みや疑問に、ジネスト先生、本田美和子代表理事が回答した解決策やアドバイスを皆さまと共有いたします。ご活用ください。

※参加者の皆さまのプライバシーに配慮し、実際の内容を一部変えている部分があります。

Q.ケアを拒否する方や攻撃的な方にはどのようにケアをすれば良いでしょうか。

ケアを拒否する方や攻撃的な方にはどのようにケアをすれば良いでしょうか

A.ケアを届けたい人に「会いに行く」という意識が大切

ケアを受け取る方が「攻撃的である」とか「拒否をする」という話はよく聞くのですが、実際に攻撃をしてくる認知症の方というのはいません。これは「攻撃している」のではなく、ご自分を「防御している」のです。

その「防御」の反応に対してどうすれば良いでしょう。まず絶対に守らねばならないのは、無理やりケアをしないことです。無理やりケアをすると相手には感情的な記憶が残り、私たちが「敵」と認識されてしまいます。逆に私たちのことを「天使のようだ」と思ってもらえれば、次のケアではその方も天使になってくださる可能性があるのです。

拒否のある方に具体的にどうすれば良いかということは、その場に行かないと分かりませんし、技術というのは耳で聞いただけでいきなりできることでもありません。技術を学び、状況の分析法を学び、状況に応じた技術の選択方法を学ぶのがユマニチュードの研修です。ここではその前提条件となる、大切なことをひとつお話ししましょう。

例えば、口腔ケアを嫌がる方がいた場合、その方の部屋に我々が行く理由はなんでしょうか。口をキレイにするためでしょうか? それでは我々はその方の嫌がること、つまり拷問をしに行くのと同じことになります。我々は口腔ケアをしに行くのではなく、その方に「会いに行く」のです。まず私たちの認識をこう変えることが大きな変化を呼び起こします。

ケアをすごく嫌がっていて、近づくと引っ掻かれたり、つねられたりして、皆から「あの人は大変だ」と思われている方の部屋に行って、私が何をするか。その人の隣にただ座るのです。2分くらい何もしないで座っていて去ります。その人にとっては、誰かが自分の傍に来るけれど何も嫌なことはされないという初めての経験をすることになります。

そして30分後にもう一度行きます。今度も何もせず、例えば雑誌を持って行ったりして読みます。「ここに面白いことが書いてありますよ」「この写真は可愛いですね」などと会話をして時を分かち合い、それが終わったらまた去ります。そしてまた30分後にもう一度行って、同じように過ごします。

毎回近づいても何もしないで帰ることを繰り返すうちに、「私はイヴです」と握手したり、その人の体に触れるタイミングを得ることができます。「何かお手伝いすることはありますか」と聞き、「ありません」と言われたら「じゃあ、帰りますね」と言って去ります。

また30分後くらいに行って、今度は「お口をキレイしましょうか?」と聞いてみます。「嫌だ」と言われたら、「そうですよね。私だってあなたのような状況でしたら嫌ですよ」と言って帰ります。こうしたことを繰り返すと「なんとなく良い感じの人だ」という印象がその人の感情の記憶に残ります。

少しずつ少しずつ近づいては離れてということを繰り返すというこの方法は「無償の時間」を重ねることです。ユマニチュードの研修は4日間、インストラクターが施設を訪れ、一緒にケアをするベッドサイド研修が主体となりますが、ここでもこの手法を使います。

多くの場合、1日で変化が生じ、4日間にはほとんどのケースは解決します。ごくまれに、4日間で完全には解決しないことがありますが、その場合は、インストラクターがその後のやり方をお伝えし、実践してもらいます。その後10日以内で困った状況が解決しなかったというケースは、フランスではこれまでに一度もありません。ケアをしに行く人が「酷いことをしない人なんだ」と分かってもらうためのステップを踏んでいくことが大切なんです。ご本人が「拷問だ」と思っている限り、何をやっても上手く行きません。

そしてもう一つ重要なのは、これも大切なケアの一部だということを、職場の皆に理解してもらうことです。そうした文化を職場で作っていくことが大切です。

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