「フランスのユマニチュード認証施設を見学して」開催レポート

会員コミュニティ「雨宿りの木」にて4月24日、初めての会員勉強会を約40人の皆様にご参加いただき開催いたしました。今回のテーマは「フランスのユマニチュード認証施設を見学して」。現在、当学会で準備が進むユマニチュードの施設認証制度について、すでに制度があるフランスでそのケアの現場を視察した、認定インストラクターの森山由香さんにお話を伺いました。

 

日本版のユマニチュード施設認証制度を検討する委員会のメンバーとしても活動する森山さんは、理学療法士及びケアマネージャーとして広島県の社会福祉法人三篠会「ひうな荘」リハビリ部長を務めていらっしゃいます。

森山さんが訪れたのは、フランスのアルザス地方にある町営施設と、シャンパーニュ地方にある民間施設。両施設で実践されているケアを豊富な写真と共に、ご自身の施設での経験も交えながら丁寧に報告してくださいました。

フランスの認証施設は

「ユマニチュードの5原則」

▽強制ケアをゼロにするケアをあきらめない

▽本人の唯一性とプライバシーの尊重

▽最期の日まで自分の足で立って生きる

▽組織が外部に対して開かれている

▽生活の場・したいことのできる場

に従い責任を持ってケアを行うことを誓約し、そのことが入所者やその家族、外部からくる方にも分かるように掲示しています。

実際にケアをする人だけでなく、経営者から料理を作る人、掃除をする人に至るまで施設の全ての職員が「ケアをする人」として、「自然にユマニチュードの見る・話す・触れるを行っていて、入居者の方と関係性をしっかり築いていることに驚きました」という森山さん。

5原則に基づいて、ケアプランが「入居者の方の人生のレベルでの支援計画」として個別に作られていること、鍵は入居者本人が持ち、OKがない限りスタッフは入らないこと、認知症専門フロアにもパソコンが置かれ自由に情報を得る場が提供されていることなど、服装から睡眠、食事、居室空間と入居者の生活の全てに、その人らしさを尊重し、人としての尊厳を保つケアが徹底していることに感銘を受けたそうです。

「ユマニチュードの5原則は、いわば旅人が目印とするポラリス(北極星)、私たちの現在の位置やこれから進む方向を示してくれる羅針盤です。より良いケア、質の高いケアへの道筋を示してくれる一つの手段で、ユマニチュードはケアのポラリスであると深く思いました」と森山さん。

「今、日本版認証制度を作っていますが、認証が最終目標ではなく、そのプロセスを大切にしながらケアの質を高めなければと感じました」とまとめました。

勉強会に参加してくださったジネスト先生は、「現在、フランスで認証を受けた施設に入所しても、何一つ失うものはありません。ペットも同伴できますし、家族や恋人も一緒に泊まることができます。眠りたいときに眠り、起きたいときに起きることができます。そして私が望むことを実現できるよう助けてくれるスタッフがいて、たくさんの優しさを受け取ることができます。亡くなるその日までその人らしい生活ができる。それがユマニチュードを導入している施設が目指していることです」と解説、「大変素晴らしい発表でした」と森山さんの報告に賛辞を送りました。

また、司会を務めた当学会の本田美和子代表理事は「日本版の認証システムをジネスト先生はじめ、様々な分野の方々とご相談をしながら作っているところです。ご興味のある方にはいつでも声をかけていただき、現場の皆さまのお考えを反映できるよう、ぜひお力を貸してください」と呼びかけました。

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