ユマニチュード認証制度の発足を記念して6月から始まった「ユマニチュードキャラバン2022」。ユマニチュードに関心を寄せてくださる全国の皆さま方と認定インストラクターとの交流会が各地で続々と開かれています。沖縄県石垣市の「ぬちぐすい診療所・認知症医療疾患センター」での会の様子をご紹介し、キャラバンが実際にどのような形で行われているかをお伝えします。

主催者・インストラクターご紹介

主催

ぬちぐすい診療所・認知症医療疾患センター
(共催・沖縄県石垣市)

ユマニチュード認定インストラクター

伊東美緒さん
(群馬大学大学院保健学研究科・老年看護学・准教授)

映像を使いユマニチュードを解説

交流会を主催された「ぬちぐすい診療所・認知症医療疾患センター」は訪問診療を主とした、開所1年を迎えた診療所です。所長の内科医、今村昌幹先生は長年、沖縄県立八重山病院に勤務され、ユマニチュードを取り入れたケアを実践されて来ました。これまでにも石垣島でユマニチュード考案者のイヴ・ジネストさんを招いた講演会を開催されていて、キャラバンにもいち早く手を挙げて下さいました。

今回の交流会には、沖縄・八重山地域の医療、看護や介護に従事する皆さま約35人が診療所に設けられた会場やオンラインにて参加。当学会からは、認定インストラクターの群馬大学大学院准教授の伊東美緒さんがオンラインで参加しました。

まずは、伊東さんが高齢者のケアの研究を長年されていること、その中で出会ったユマニチュードが「介護や治療を拒否する方々へのケアの仕方に答えをくれる」ことに驚き、ユマニチュードに関わるようになったと自己紹介。

続いて、アルツハイマー型認知症のお母様の介護にユマニチュードを取り入れたご家族の変化を記録した、NHK厚生文化事業団のビデオ「優しい認知症ケア ユマニチュード」を参加者の皆さまと見ながら、具体的なユマニチュードの技術やその考え方を解説しました。

伊東さんは「(ユマニチュードを取り入れた後で)“認知症の妻を持っても不幸ではない”“人生が楽しくなってきた”という言葉がご家族の口から出てきました。ユマニチュードでご家族の気持ちがポジティブになると、ご本人にもその影響が出てきます。ご家族はその反応が嬉しくなり、また新たな行動ができる。ユマニチュードにはそうした相乗効果があります」と、ユマニチュードがご本人とその周囲の方々にもたらす効果を説明。

さらに、この春より始まった「ユマニチュード認証制度」とその意義、さらにユマニチュードを知るための書籍や映像資料の紹介も併せて行いました。

「地域全体に広めたい」

会の後半は参加者の皆さまとインストラクターが共に語らう交流の時間です。

会場にいらした方々からは「本など言葉では分からないことが、映像で実際のユマニチュードのケアの様子を見られたことでよく分かりました」「ユマニチュードは初めて知りましたが、こうしたことはご本人だけでなくご家族にも必要だと思いました」との感想が聞かれました。

また、ユマニチュードの講座を行ってもなかなか実践に結びつかないというお悩みも。伊東さんは、職場で1人で実践する難しさに共感しつつ、「2人でも3人でも、同じ職場の方が複数で一緒にユマニチュードを学ぶと実践しやすくなります」「(ユマニチュードの技術を使うことで)ご本人に起こる変化がよく分かる動画を現場で作り、職場や地域での研修で活用してみては」とアドバイスをしました。

また、高齢者が多いものの使える介護サービスが少なく、また人材も不足しているという離島ならではの課題がある中で、参加された医師からは「職場などの単位ではなく、島全体、地域全体を一つの組織としてユマニチュードを広げる方法もあるのではと考えています」との発言も。

訪問診療に関わる方からは「認知症の患者さんに学びたてのユマニチュードを使ってみたら、ほんの10分、15分ほどの出会いでしたが、帰るときには(患者さんの方から)握手をして下さって、本当に嬉しくなりました。この八重山地域の介護に関わる方々に広く伝えたいと思っています」との嬉しい実践報告も聞かれました。

「ぬちぐすい診療所・認知症医療疾患センター」主催の交流会は和やかな雰囲気の中、1時間半ほどで終了いたしました。

ユマニチュードキャラバン2022に関する情報

開催のご案内(PDFファイル)

デモンストレーション・会場のご案内(PDFファイル)

2022年9月24日(土)、25日(日)の2日間、京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホールにて第4回日本ユマニチュード学会総会を開催いたします。
会場での開催に加えて、より多くの方にご参加いただけるよう、後日期間限定のオンデマンド映像配信を致します。

第4回 日本ユマニチュード学会総会

『優しいケアの仕組み ~ユマニチュードとサイエンス~』

同時開催

生存科学研究所共催・第10回市民公開講座

開催概要

『「優しい介護」インタラクションの計算的・脳科学解明』は2017年に科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究テーマとして採択され、国の研究プロジェクトとして、情報学・工学・心理学・医学・看護学などさまざまな分野の専門家が「ユマニチュードはなぜ有効なのか?」に関する研究を進めてきました。

1日目の市民公開講座では、このプロジェクトの歩みと成果についてご紹介します。研究チームが開発した、仮想現実によるユマニチュード・トレーニングシステムや、触れる技術を搭載したロボット、ケア技術を評価する計測システムなども会場で体験できます。

2日目の学会総会では、ユマニチュードの実践、教育、研修効果、家族介護などに関する研究成果について、口頭発表やポスター発表、シンポジウムを通して学びを深めていきます。加えて、4月から開始した『ユマニチュード認証制度』への取り組むパイロット施設20事業所の進捗の報告と、第3回学会定時社員総会も開催いたします。

※申込期間は終了しました。

会員登録のご案内

2日目の学会会員総会への参加は日本ユマニチュード学会会員は無料、会員以外の方は有料(4,000円)となります。会員以外の方は、この機会にぜひご入会をご検討ください。
年会費3,000円(家族と市民の会)からご参加いただけます。

参加方法

会場開催

感染状況に応じて各種ガイドラインと照らし合わせ、会場や人数等に変更の可能性があります。方針が固まり次第、速やかにこのページにてご案内致します。

申込み 必要参加登録フォームはこちら。

1日目:市民公開講座

会員・非会員に関わらず、事前の申し込みが必要です。

2日目:日本ユマニチュード学会会員総会

会員・非会員に関わらず、事前の申し込みが必要です。
日時 2022年9月24日(土)、25日(日)
会場 京都大学国際科学イノベーション棟西館5F
シンポジウムホール
(感染状況に応じて開催場所・方法の変更の可能性があります。)
アクセス方法はこちらから
※当日のオンラインライブ配信はありません。
定員 150名を予定
(感染状況に応じて定員人数の変更の可能性があります。)
※発表者、関係者を除き先着申し込み順。
参加費

1日目:市民公開講座

会員・非会員に関わらず無料

2日目:日本ユマニチュード学会会員総会

日本ユマニチュード学会会員の方:無料
※参加当日までに会員資格を有している必要があります。
※非会員の方は、当日現地支払いで参加費として4,000円(現金のみ)

総会終了後のオンデマンド映像配信

学会総会終了後に期間限定で各種講演や口頭発表等をオンデマンド映像配信にてご視聴いただけます。

※発表内容により、発表内容を一部カットして配信することがあります。ご了承ください。
参加費 日本ユマニチュード学会会員の方:無料
※非会員の方で、会場開催の参加費用をお支払いいただいている場合はオンデマンド視聴費用が含まれます。会場参加の受付時に視聴方法をご案内します。
視聴方法 事前の申し込みは不要です。
視聴方法は会員向けにメールでご案内いたします。
配信期間中に新規会員登録された場合もご視聴頂けます。ご視聴を希望の場合は、会員登録をお願いします。

プログラム(敬称略)

※講演タイトルなどは変更となる場合がありますことご了承ください。

2022年9月24日(土)13:00-17:00

生存科学研究所共催・第10回市民公開講座
 〜優しいケアのしくみ ユマニチュードとサイエンス〜

※第1部はどなたでもご覧いただけます。(無料・要事前登録)

科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)では「人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開」の学際的な研究が行われています。2017年度に京都大学・中澤篤志准教授をリーダーとする研究チームがこの事業に採択され、『「優しい介護」インタラクションの計算的・脳科学的解明』をテーマとした研究が始まりました。この研究は「ユマニチュードはなぜ有効なのか」を分析し、ユマニチュードの技術を科学的に計測する手段やユマニチュードを学ぶための教育システムの開発、さらにそれらを使った臨床応用研究を実施し、成果をあげています。

今回の市民公開講座では、科学者が「優しいケアのしくみ」に取り組んだ5年間の研究の成果をわかりやすくご紹介します。

12:00 開場
13:00-13:10 開会挨拶
公益財団法人 生存科学研究所 理事長 青木 清
13:10-13:55 基調講演1
『情報医学の観点から考えるユマニチュード』
イヴ・ジネスト氏(ジネスト・マレスコッティ研究所所長)
14:00-14:30 基調講演2
『ロボット技術でめざす優しいケア』
住岡英信氏(国際電気通信基礎技術研究所)
14:30-14:40 質疑応答
14:40-14:50 休憩
14:50-16:00 シンポジウム
『優しいケアのしくみ ユマニチュードとサイエンス」』
・中澤篤志様(京都大学大学院情報学研究科准教授)
・倉爪亮様(九州大学大学院システム情報科学研究院教授)
・佐藤弥様(理化学研究所情報統合本部 チームリーダー)
・石川翔吾様(静岡大学学術院情報学領域助教)
・本田美和子(国立病院機構東京医療センター総合内科医長)
・全体討論

16:00-17:30 『研究成果のデモンストレーション』

ユマニチュードの技術を評価する

・「ユマニチュードの見る技術」を評価する1人称視点カメラシステム
・「ユマニチュードの触れる技術」を評価する手袋型圧センサーシステム
・「ユマニチュードの立位介助技術」を評価する体の動きの計測システム
・ケア中の相手との距離を簡便に計測するスモック型・マスク型センサー

ユマニチュードを学ぶ

・拡張現実(AR)を用いたユマニチュード・シミュレーション教育システム:HEARTS-3
・IT技術を使ってチームでユマニチュードを学ぶトレーニングシステム

2022年9月25日(日)9:00-16:00

日本ユマニチュード学会 会員総会

参加方法については、「参加方法」の項目をご確認ください。

第4回日本ユマニチュード学会総会 抄録集(PDF)

口頭発表プログラム(PDF)

8:40 開場
9:00-9:05 大会長挨拶
9:05-12:00 口頭発表
12:00-13:00 昼休憩
会場ホワイエにて、「生存科学研究所共催・市民公開講座〜優しいケアのしくみ ユマニチュードとサイエンス〜」にて発表されたデモンストレーションを行います。
13:00-14:00 シンポジウム
『ケアの見える化に取り組んだ郡山市医療介護病院の歩み』
2016年より6年に渡り、静岡大学情報学部協力のもと、自分たちのケアを撮影し映像学習を現場に取り入れている同病院の歩みを発表いただきます。数値化することが難しいケアを、サイエンスの力で見える形にし、それを再び現場にフィードバックすることで、ケアの現場にどのような変化が起こるのか、それぞれのお立場からお話を伺います。

原寿夫様(郡山医師会郡山市医療介護病院 院長)
中野目あゆみ様(郡山医師会郡山市医療介護病院)
菅家穣様(郡山医師会郡山市医療介護病院)
香山壮太様(郡山医師会郡山市医療介護病院)
小俣敦士様(静岡大学情報学部情報科学科)
14:00-15:00 『ユマニチュード認証制度日本版の進捗報告』
森山由香 認証制度本部長(ユマニチュード認定チーフインストラクター )

15:00 閉会

日本ユマニチュード学会 第3期 定時社員総会

※定款第16条ならびに第23条の定めにより、今回の社員総会の招集通知は、2022年6月末までに登録・承認された正会員(賛助会員正会員も含む)の方が対象となります。参加方法については後日ご案内を差し上げます。

15:00-16:00(予定) 日本ユマニチュード学会 第3期 定時社員総会


ユマニチュード認証制度のスタートにあたり開催いたしましたオンラインシンポジウム「よいケア、よい生活の場とは〜ユマニチュード認証制度の検討から」の模様の後編です。

前編はこちら

「よいケア」にたどり着く評価項目

本田美和子・代表理事 続きまして認証制度について改めまして皆さんのお考えをお伺いできればと思います。まず早出さん、いかがでしょうか。

早出徳一委員 お話にありました認証の評価項目についてですが、本当に細かな項目があるんですけれども、今まで介護の世界に「よいケア」をするためにはどういうことを行っていけばいいかという、ここまで明確な基準はなかったのではないかと思います。

もちろん介護保険制度の中で制度の決まりというものがあります。「虐待はいけません」「身体拘束はしては駄目です」とか、「週2回はお風呂に入れてください」ということはありますが、それは結局、最低の基準として「これはやってはいけません」「これ以上はやってください」というものです。

介護の現場にもマニュアルは存在していて、私どもの法人では介護福祉士のテキストや介護職員の初任者研修のテキストから、その中身を引いてきています。でも、そこにも一般的なことは書かれていますが、実際に「こんなケアをするといいです」という、具体的なことが示されているものはあまりありません。

そうした意味で、私はユマニチュードの評価項目は介護の現場で「こういうことをするといいですよ」というものになり得ると捉えていまして、しっかり組織として取り組んでいくことに、とても意義があると思います。

本田 ありがとうございます。評価項目は日本の法制度にも沿ったもので、ユマニチュードの認証の取り組みを進めることで、日本の行政から求められている条件もクリアできる形にいたしました。イメージとしましては、すごく大きな川を渡りたいけれど、橋がない。その時に川の中に大きな石が飛び飛びにあって、順に一個一個飛び乗っていくと、最終的に向こう岸に行ける、というような感じかなと思います。目的を達成するための道のりをお示しするものです。

逆説的になるかもしれないのですが、この評価項目を実践すれば「よいケア」の場を実現できます、というシステムでもありますので、認証の取得を目的としない方々にも、ぜひご利用いただけたらと思っています。多くの方がよいケアを受けられる社会づくりの一助になれたらうれしいです。佐々木さんは利用者という立場からこの認証制度についてどのようにお考えでしょうか。

メダルが施設選びの目安に

佐々木恭子委員 この制度には二つの意味があると思っています。ユマニチュード学会が発足した時のシンポジウムも聞かせていただいたのですけれど、その時にどなたかが、ユマニチュードを素晴らしく思っていて取り入れていきたいのに、なかなか周りにそれを伝えることがしんどいことなんだとおっしゃったんです。

今の現状を変えたいと思っている人がいて、その思いはあってもそれをどうやって周りに伝播させるかという時に、制度や仕組みというものは、その後ろ支えになると思います。熱いリーダーがいればできるというような属人的なものでは意味がなくて、その状態が続いてこそ根付く、人が変わっても制度があれば理解する人が増え続けるという意味で、やはり仕組みというのは大事だなと思っています。

もう一つ自分が施設を利用する立場で考えると、認証マークというのはそれぞれの施設のPRポイントとなります。自分が利用を考える立場になったときに、ユマニチュードのブロンズメダルを掲げている施設があれば積極的に利用したいと思います。利用者側にとって選択の幅が広がると思いますし、視点が増えると思います。

本田 私のところにも「ユマニチュードを導入している施設に家族を入れたい」「自分が入りたいけれどもどこにありますか」というお尋ねが多く来るのですが、ユマニチュードを学んだ方がいらっしゃるということと、その施設がユマニチュードを組織として実践している状況にあるかということはまた違うということを知るに至り、「よいケアの場を目指す」ことを目標に、認証に取り組もうという施設があるということはすごく重要なことだと思いました。

佐々木さん それが言語化されているということがすごく重要かと思います。例えば入学試験で学校を選ぶときに、その学校の校風はすごく言語化するのが難しいですよね。ユマニチュードで考えると、ユマニチュードの哲学によって作られるその施設の文化が校風に当たるかと思いますが、ユマニチュードの認証メダルが、具体的なメソッドと理念が結びついているマークだと思うと、施設を選びやすいと思います。

ウェルビーイングを叶えるユマニチュード

本田 ありがとうございます。山口先生、最後に一言いただけますでしょうか。

山口晴保委員 話が少し外れるかと思いますが、マイブームの話をします。私はなるべく認知症をポジティブに捉えようと提唱しているんですけれど、最近、認知症のケアは医学的なケアと人間学的なケアの両方が必要だと思っているんです。

医学的なケアというのは、その代表がBPSD(認知症の行動・心理症状)なんですが、BPSDというのは医学用語で、医学会が決めた患者の症状なんですね。医学というのは要するに悪いところを無くす、病気を無くすということですから、BPSDというのは異常な行動・言動であって、それを無くすというアプローチが医学的なケアモデルで、私はそれをネガティブケアと呼んでいます。その本人の良い所を伸ばす、隠された潜在能力を引き出すのがポジティブケアで、まさにユマニチュードがポジティブケアなんだろうと理解をしています。

人間は、普段からネガティブな言葉を口にしているとどんどんネガティブな方に行きますし、脳も体も使わなければどんどん機能が悪化して行きます。逆に、脳も筋肉も骨も、体の機能は使えば使うほど向上していきます。それが人としての大原則で、認知機能が低下した状況で色々と生活に困難を抱えている人がどうやって楽しく、私はウェルビーイングという言葉を使っているんですが、ウェルビーイングな状態でいられるようにすればよいのか。

心理学ではどういう状態がウェルビーイングなのかいくつかの要素があるのですが、まずは「ポジティブ感情がたくさんある」ということが大切です。ユマニチュードのケアを受ける側の人に「自分が大切にされている」と分かってもらえるというのは、ポジティブ感情を増やすことになります。ユマニチュードはそういうアプローチをしています。「他者との良い関係性」も要素の一つですが、これもユマニチュードが非常に大切にしていることです。

それから、本人が「ケアをされる」のではなくて主体性を持つということも大切で、人は人として認められると「生きていこう」という前向きな気持ちになると思うんですが、ユマニチュードはそこにもアプローチしています。

さらにもう一歩進めると「役割」というのもとても大切なんですね。ただ単に与えるケアではなくて、本人が何らかの役割を持つ。例えば「立つ」ことも、本人が協力をするから立てるのであって、そうでなければ介護をする人が100%引っ張り上げてしまうことになります。ケアもケアをする人と本人との共同作業だと思うんですが、本人の役割に着目して、協力してくれたことに感謝をすることもユマニチュードには含まれています。

ポジティブ心理学での幸福の条件とユマニチュードが目指すものには共通する部分がかなりありますから、こういうケアが日本でどんどん普及してくれるといいなと思っています。

人材確保につながるユマニチュードの導入

本田 ありがとうございます。認証制度についてはいかがお考えでしょうか。

山口さん 認証制度に取り組む施設と取り組まない施設があると思いますが、取り組む施設がいわばオピニオンリーダーや先達という感じで、一歩先に自分たちでよいケアを行って、その効果をぜひ示して欲しいです。

ユマニチュードを導入した施設で離職率が減るというのは、是非強調して欲しいことですね。それは施設経営にとっての最大の効果ではないかと思います。ユマニチュードの認証を受けるとコストはかかるけれども、そこに勤めてる人の満足度が高く、辞める人が少ないですよというのを世の中に示していくことがとても大切だと思います。そうすると導入する施設がどんどん増えるんじゃないかと期待しています。

本田 その点では早出さん、研修を実施した管理者の手応えとしていかがでしょうか。

早出さん はい、では私どもの施設で出ているユマニチュード導入の成果を簡単にお示しします。一つは定着率です。始めて2年くらいになりますが、108人が受講して、退職された方は2名です。多いか少ないかは事業所によって状況が違うかと思いますが、私どもの法人で今までの離職率を考えると、これは飛躍的に少ない数だと思っています。

おそらく、チームとしての目標をみんなが持って、「こういう介護をしていこう」「我々はこうしたケアを行っていくぞ」という気持ちがありますので、それが離職率という部分に表れているではないかと思います。

もう一つは新しい職員の採用です。今、介護の世界では人材を確保するのが難しいのですが、今年度私どもの施設では2人の新卒の職員を迎えることができました。その2人が自分の就職場所の決め手として考えてくださったのが、ユマニチュードなんです。

「色々な施設に実習に行ったけれど、この施設はちょっと変わったことをしている。なぜこんなことをしているのかな」から始まって、「もっとユマニチュードを知りたい」そして「ぜひこの職場で働きたい」というところに繋がったようです。ユマニチュードに取り組んで2年足らずで、実績としては足りないですが、我々投資している側としても、その成果は続けて見ていきたいと思います。

それと、山口先生からポジティブ感情という話がありましたが、ユマニチュードというのは本当にその通りだと実感しています。年老いてできないことが増えて、諦めてしまうという社会でなく、老後がワクワクできるような、自分の望む暮らしが実現できるような社会づくりを進めて欲しいと思っていますが、それがユマニチュードにあると思います。「日本の老後には未来がある」と言われるよう、私自身も頑張って取り組みたいと思います。

本田 ぜひよろしくお願い致します。お話は尽きませんが、お時間がなくなってきました。最後にご紹介をしたいことがございます。ユマニチュードを多くの方に知って頂くために、日本財団の支援をいただき、認証制度の制定を記念しました「ユマニチュードキャラバン」を始めました。

詳しくは当学会WEBサイトをご覧いただきたく思いますが、ユマニチュードについて知っていただき、また認定インストラクターと交流していただく場でございますので、ぜひお申し込みください。

本日はこれにて終了したいと思います。100名を超す皆様にご参加いただき、とても嬉しく思います。ありがとうございました。

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