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会員限定オンラインサロン「雨宿りの木」第三回レポート | 日本ユマニチュード学会|人間らしさを尊重したケアを共に社会へ

会員限定オンラインサロン「雨宿りの木」第三回レポート 

 オンラインによる会員サロン「雨宿りの木」の第3回の集まりを10月17日、約60人の会員の皆様に参加いただき開催いたしました。今回のゲストは、医療法人社団東山会調布東山病院のユマニチュード推進室科長で看護師の安藤夏子さん。前回の同会理事長、小川聡子先生に引き続き、ユマニチュードの施設導入ついて現場の実務者の立場からのお話を本田美和子代表理事が伺いました。

 

まずは知ってもらう

 安藤さんがユマニチュードに出会ったのは2014年。施設導入を考えた小川先生の指示でジネスト先生の研修を受けることになったものの、最初は「何かのイリュージョンと思い、全く信じていなかった。半信半疑で怪しいと思っていた(笑)」そうです。ところが、自らユマニチュードを実践してみたところ、全く反応のなかった患者さんが言葉を発してくれたことで「自分たちの声が届いている」と手応えを感じ、ユマニチュードが「精神論でなく実践論であることが腑に落ちていった」と言います。
 その後、施設導入のための研修を経て、ユマニチュード認定インストラクターに。2017年には、東山会全体にユマニチュードを浸透させるために設置されたユマニチュード推進室を担う立場を任されます。「途方に暮れましたが、最初の頃の私のように、まずはユマニチュードを知ってもらわなければどうにもならない」と全職員に周知を図ることを目的とした1日半の研修を設けて、これまでに38回、延べ462人が参加しているそうです。
 さらに「一緒に現場でケアを実践していく」ため、現場からの依頼を受けて共にケアに入ることも。導入当初、2017年は17件だった依頼が、今年9月末の時点で140件の依頼を受けるまでに増え、最近は看護部だけでなく放射線科や内視鏡室、訪問看護など様々な部署からの依頼も来るようになったそうです。
 ただ、「困ったときに役立つメソッドとして受け入れられ呼ばれることが多いのですが、困った状況を良くするのは大変。急性期病院としては、みんなが困らないようにするための予防のユマニチュードが非常に大事」と、今だからこそ気づいた反省点も。「患者さんが入院したその日から、ここは安心できる場所でみんな味方であるという人間環境を届けることで、せん妄やBPSD(認知症の行動や心理症状)の悪化、向精神薬の投与など入院による弊害を予防できないか」と視点を変え、ユマニチュードに取り組むようにしているそうです。

諦めずケアを実践し伝え続ける

 本田代表理事から施設にユマニチュードを浸透させていく過程での苦労を聞かれた安藤さんは、「数え切れないというか、もはや何に苦労したかも分からない状況で。ユマニチュードが入っても何も変わらないと言われたこともありますし、そういう人たちを変えることはなかなか出来ない」と苦笑。「職場の仲間同士で、自分のケアを評価し合ったり、伝え合うことで、自分たちのモチベーションを保っています。相談できる仲間がいることはいいことだなと思います」と語りました。その上で、施設内でのインストラクターという存在について、「インストラクターがいないと施設にユマニチュードを浸透できないかというと全くそうではないです。実践者として哲学が伝えられ、周りの人を巻き込んで一緒にやることが大事。インストラクターである必要はないと思います」と強調しました。
 今後は「急性期病院でのケアをユマニチュードの哲学に基づいて実践するためにも、インストラクターが不在でもケアを展開していけるメンバーを育てること、また地域全体でユマニチュードに取り組んでいくことが課題」と安藤さん。「院内ではケアを受けられたけれど、その先はどうかというところまで繋げていくことが非常に重要になってくると思います。今の地域包括ケアシステムの中でユマニチュードを伝えていきたい」と抱負を語りました。
 参加者の皆様からの質問、コメントも多く寄せられ、安藤さんが実践した事例として、ご家族が暴言と暴力に苦労されているケースで行ったユマニチュードを使った支援を紹介して下さいました。また「ユマニチュードの哲学を他のスタッフに理解してもらうための手法は」という質問には、「技術は全て哲学に基づいています。目を見るといい、ノックをするといい、という言葉ではなく、なぜそれが必要なのか、何のために使うのか、その裏付けを伝えていくことが哲学になると思います」とお答えいただきました。
 「私もみなさんと同じように毎日悩みながら続けています。大変ですし、全てを捨ててしまえば楽かなと思うこともあります。でも、ジネスト先生たちもユマニチュードを作り上げるまで想像も及ばない苦労をされて来ていると思いますが、決して諦めなかったから、今こうやって私たちが学ぶことができます。一人一人が諦めずにケアを実践し伝えることに大きな意味があります。皆さんとも仲間として一緒にやっていけたらいいなと思います」と会員の皆様に呼びかけました。

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