日本ユマニチュード学会第4回総会 開催レポート

日本ユマニチュード学会第4回総会を2022年9月24日25日の両日にわたり京都大学国際科学イノベーション棟シンポジウムホールにて開催し、後日、録画版をオンデマンド配信いたしました。ご協力いただきました皆さま、ご参加くださった皆さまに改めてお礼を申し上げます。

新型コロナウイルスの影響もさることながら、前日からの大雨により交通機関に乱れが生じ、多少ながらもプログラム内容の変更を余儀なくされました。しかしながら、皆さまのお力添えにより、無事に2日間の全プログラムを終了することができました。(第4回学会総会の詳細はこちら)

今回第4回総会のテーマは『優しいケアの仕組み〜ユマニチュードとサイエンス〜』。2017年に科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究テーマとして採択された『「優しい介護」インタラクションの計算的・脳科学解明』について、情報学・工学・心理学・医学・看護学などさまざまな分野の専門家が「ユマニチュードはなぜ有効なのか?」に関する研究を進めてきた、その成果を中心に、ユマニチュードに関する様々な最新の研究や取り組みについて発表がなされました。

1日目は、生存科学研究所共催による第10回市民公開講座として、2つの基調講演およびシンポジウムを行いました。基調講演1つめは、ユマニチュード考案者イヴ・ジネスト先生によるフランスからのオンライン講演でした。私たちが周囲から得る様々な情報はどのように脳に届けられているのか、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱の情報学的な効果は何かなど、ユマニチュードを通した幅広い観点から「優しいケアの仕組み」を解説されました。

基調講演2つめは、国際電気通信基礎技術研究所 住岡英信氏による「ロボット技術で目指す優しいケア」でした。ロボット技術の介護への有効性について、人形対話ロボットを用いた認知症高齢者へのコミュニケーション支援とともに、ロボット開発の中で培った技術を用いて、立ち上がり動作介助における「優しい介助」を計測し、理解する取り組みについて紹介されました。

続いて開催されたシンポジウムでは、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)研究テーマである『「優しい介護」インタラクションの計算的・脳科学解明』について、研究チームそれぞれの成果発表や全体討論が行われました。

また会場外のスペースでは、デモンストレーションとして、シンポジウムで発表された研究チーム開発のシステム体験が行われました。ユマニチュードの技術を評価するシステム、ケア中の相手との距離を簡便に計測するスモック型・マスク型センサー、拡張現実(AR)を用いたユマニチュード・シミュレーション教育システム、IT技術を使ってチームでユマニチュードを学ぶトレーニングシステム等を、実際に多くの方に体験していただくことができました。

こちらのデモンストレーションは、2日目も引き続き実施しました。

2日目は、まずは15演題の口頭発表が行われました。「分析調査」「導入効果」「実践事例」の3つのテーマに分かれ、ユマニチュードの実践、教育、研修効果、家族介護などに関する取り組み事例などについて、様々な立場・視点から発表が行われました。質疑応答を通じた意見交換も盛んに進み、学びを深めることができました。

続いて午後より、『ケアの見える化に取り組んだ郡山市医療介護病院の歩み』 と題して、2016年より6年に渡り、静岡大学情報学部協力のもと、自分たちのケアを撮影し映像学習を現場に取り入れている同病院の歩みをシンポジウム形式にて発表いただきました。数値化することが難しいケアを、サイエンスの力で見える形にし、それを再び現場にフィードバックすることで、ケアの現場にどのような変化が起こるのか、それぞれのお立場からお話を伺うことができました。

続けて最後のプログラムとして、「認証制度日本版」についての進捗報告が行われました。4月から開始された『ユマニチュード認証制度』。そのパイロット事業に取り組む20の事業所それぞれの意気込みが動画メッセージにて紹介されました。いずれの事業所も、「ケアの見える化」や「組織の取り組みの見える化」によって「よいケア・よい生活の場」実現に向けた意欲的な取り組みを進めており、スタッフの意識の統一・向上にもつながっているとのこと。加えて、パイロット事業所(認証準備会員)の一つである広島県広島市「ふじの家瀬野」のスタッフ3名が、パネルディスカッション形式で、それぞれの立場からの取り組み報告を行いました。学会と連携して行ったワークショップを通して、スタッフの共通認識が醸成されたことや、お便りや冊子など作成といったご家族への共有化の工夫など、具体的な取り組みエピソードが好事例として紹介されました。

過去2回の総会はオンラインでの開催でしたが、今総会は直接の意見交換やデモンストレーション等、実体験ができる場も設けることができ、より学びの深い会になったものと思います。会場内のスペースに十分な距離を置きながらも、2日間合計で延べ135名の会員、非会員のみなさまにご参加をいただくことができました。

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